タレントの公演数は82%減…コロナ支援策、個人にハードル高く<続・舞台の灯をつなぐ>1


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コロナ禍で感じるお笑いの在り方や、舞台にかける思いなどを振り返るお笑い芸人の小波津正光(まーちゃん)=7月27日、那覇市泉崎の琉球新報社

 沖縄イベント情報ネットワークとみらいファンド沖縄がこのほど、ミュージシャンなど文化芸能活動を実施している演者を対象にコロナ禍前後の経済状況、活動内容をアンケートで聞いたところ、収入の5割以上を失った人が回答者の約75%に上り窮状が浮き彫りになった。出口が見えない中、苦闘を続ける芸能従事者の姿を通し、舞台の灯をつなぐための支援の仕組みを探る。

 アンケートしたコロナ前後の各ジャンルの出演回数の推計によると、2019年に年間、275回以上舞台に出演していたタレント(お笑い、司会を含む)の公演数は、20年には82%減の50回に減るなど、公演数が極端に落ち込んでいることが明らかになった。お笑い芸人の小波津正光(まーちゃん)が企画・脚本・演出を務める、演芸集団FECの舞台「基地を笑え!お笑い米軍基地」は昨年7月、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止になった舞台に代わり、新作コントを収録したDVD付きのムック本を発売した。今年は有観客での公演実現に向けて、8月に開催を予定していたが、県の緊急事態宣言の延長や感染状況を受けて中止となった。

 まーちゃんは「コロナ下でも応援したい、必要だと言われる芸人にならないといけないし、そういうものを作らないといけない。多くの人じゃなくても身内を喜ばせることができたら、僕たちがその人にとって必要、世の中に必要だということになる。そういう舞台を仕掛けられる芸人でありたいし、このコロナ下で提示していきたいと感じる」と話す。

 アンケートの解析結果では、文化庁や県文化振興会などによる主に文化芸術芸能活動を支援する文化系の支援策と、家賃や運営資金などに充てる事業系の支援策とに分け、実際に制度を利用した割合を把握した。事業系の支援策を利用した人が68%なのに対し、文化系の支援制度を利用した人は32%にとどまった。

 文化系の支援制度について、別のお笑い関係者は「(申請手続きは)芸能に携わる個人の方には難しい話だ。オンラインの勉強会に参加したり、芸能に理解のある弁護士や司法書士にネット上で質問したりして探りながらという感じだった」と振り返る。今後必要とされる支援についてアンケートでは「一律給付」を求める声が最も多かった。実際まーちゃん個人としては、持続化給付金の支援が大きかったと言う。

 まーちゃんは「(お笑いで)感情を表現するということは、僕の中では水を飲む、息をするということと全く同じこと。どうしようもない状況こそ、本当はお笑いが必要だし、お笑いの本領を発揮できると思っている」と力を込めた。