菅首相退陣で沖縄政局どうなる 総選挙の日程は、退陣後も影響?


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 官房長官時代から約9年間にわたり、自民党政権の沖縄政策を中心になって担ってきた菅義偉首相が総裁選の不出馬を決め、今月末の退陣が決定したことで県内政界には激震が走った。菅氏は「沖縄の振興と基地負担軽減のために、できることはすべて行う」と繰り返し述べてきた。米軍基地問題を巡っては、県の意見を一顧だにせず名護市の新基地建設を強行し、県民の反発を招いた一方、沖縄振興を前面に掲げた。県民にとって自民党政権の「象徴」とも捉えられた菅氏の退陣を巡り、「県内政局に与える影響は計り知れない」(自民党県連幹部)との声が与野党から漏れた。

 菅氏は自民党が2012年に政権復帰後、沖縄の基地負担軽減担当を兼ねる官房長官に就き、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を含む基地問題や、沖縄関係予算の取りまとめなど、沖縄政策を両面でグリップしてきた。基地問題への対応や選挙応援で20回にわたって来県し、県内関係者と親交を深めたが、首相就任後は新型コロナウイルスの拡大もあり、一度も来県できていなかった。

 路線変更

 3日正午前、テレビのニュースで菅氏の総裁選不出馬が伝えられると、自民党県連幹部は困惑の表情を浮かべつつも「任期満了での退陣であって、前首相のように投げ出したわけではない」と強調した。その上で「現状の難しい状況で、かじ取りをしてきた。世論の風向きは変わるだろう」と見通し、今月末の党総裁選などを通じて、政権への風当たりが和らぐことに望みをかける。

 ただ、同県連は第2次安倍政権以降、菅氏を中心とした政府の沖縄振興策を前面に打ち出し、各種選挙で県民の理解を促してきた面もあった。県政与党からは、菅首相の退陣によって自民党県連の選挙方針が、根源から路線変更せざるを得ない状況に陥ったとの指摘も上がる。

 影響力保持

 菅氏の退陣の意向表明前、衆院選は10月5日告示、同月17日投開票との観測が強まっていた。だが、党新総裁の首相指名や、組閣など政治日程を踏まえると、選挙日程はずれ込む見通しだ。

 衆院選の日程を念頭に、県政野党関係者は「新しい総理が明確なメッセージを打ち出すなどして国民の期待値が上がった場合、野党もあおりを受ける。戦術の見直しを考えていかないといけない」と強調する。

 選挙までの期間が長引く見通しとなったことで、県内与野党ともに今後戦略を練り直す構えだ。

 自民党内や政府高官の間で、菅氏の退陣は総裁選や衆院選での「明確な敗北」を回避したとの見方も上がっている。官僚の人事権を掌握し、強力に政策を推進してきた菅氏の影響力は退陣後も保持される可能性を指摘する声もある。政府高官の一人は「(沖縄政策でも)裏で糸を引くのではないか」と見通した。

  (大嶺雅俊、知念征尚、池田哲平)