センダンの抗がん作用実証 マウス実験で確認 犬への投与でも改善
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【名護】名護市の生物資源研究所などがセンダンが39種類のがん細胞に効くことを実証した論文「亜熱帯における沖縄諸島のセンダンの葉の成分によるガンに対する効能」が18日までに、米国のがん研究に関する学術誌「American Journal of Cancer Research」に掲載された。
センダンはセンダン科の落葉広葉樹で国内では九州や南西諸島に自生している。古代ギリシャの頃から薬用効果は知られていたというが、今回の論文で初めて生体実験を経て科学的に実証された。研究を主導してきた同研究所の根路銘国昭所長は「古代ギリシャから約2千年を経て、沖縄で科学的に証明されたことは意義がある」と強調した。
研究は同研究所が沖縄科学技術大学院大学(OIST)などの協力で進めた。人間のがん細胞を移植したマウスにセンダンの物質を液体にしたものを飲ませたところ、がん細胞の分裂を止める効果が確認された。がんが自然発生した犬にも投与したところ、76%で改善や完治がみられた。OISTの分析で、センダンががん細胞のオートファジー(自食作用)を促し、DNA合成の抑制や腫瘍細胞を壊死(えし)させるタンパク質の一種、サイトカインを誘導していたことも判明した。
研究には県産のセンダンを用いた。論文のタイトルにも「沖縄」の文字をあえて盛り込んだという。根路銘氏は「沖縄の生物資源を使って世界の健康に貢献できることはアピールになる。沖縄の自立経済にもつながる」と期待を寄せた。
今回の論文はOISTなどの協力でデータに基づいて抗がん作用を証明したことで、学術誌への掲載に至った。論文を共同執筆したOISTの山本雅細胞シグナル研究室教授は「センダンの葉について生体実験を経て論文化されたのは初めてだ。沖縄で同様の研究が進んでほしい」と述べた。
副作用がない抗がん剤開発への期待も
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【名護】名護市の生物資源研究所などの研究でセンダンは従来の抗がん剤に匹敵する効果が示された上、精製を経て効果を維持したまま毒性を除去できることも確認できた。センダンを用いることで、副作用のない抗がん剤の開発につながる可能性も出てきた。
培養したヒトの胃がん細胞を用いた実験では、センダンの成分が一般的な抗がん剤「マイトマイシンC」と同程度以上にがん細胞のDNA合成を阻止する効果が確認された。毒性を除去できる低い濃度でも乳がん、脳腫瘍、大腸がん、肺がん、皮膚がん、子宮がん、肝臓がん、胃がん、前立腺がんの39種類のがん細胞で殺傷効果があった。
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従来の抗がん剤は注射で投与するタイプがほとんどだが、今回の研究ではイヌやマウスにセンダンの成分を液体で経口投与した。経口投与の場合、消化器で薬剤の毒性が除去されるため安全性がより高められるという。
一方、経口投与の薬は注射用の薬に比べて必要な原料の量が多くなる。研究を主導した同研究所の根路銘国昭所長は「センダンは大量に入手できる。極めて安価な抗がん剤の開発につながる」と強調する。
センダンを用いた抗がん剤の開発にはヒトでの臨床試験や、安全性の確認などの研究を進めていく必要がある。根路銘氏は「センダンの成分を使って世界の人たちの命を救っていきたい」と意気込む。
【識者談話】解明を重ねて沖縄の知財に(吉見直己・琉大大学院前教授)
琉球大学大学院医学研究科腫瘍病理学講座の吉見直己前教授の話 沖縄でよく認められる植物由来のエキスでの成果だ。まだ人間への応用には時間を要すると思われるものの、それに含まれる成分によっては、将来的に沖縄の知的財産になる可能性がある。
論文が掲載された専門誌は雑誌としては比較的最近に創刊されたものではあるが、引用頻度などからがん研究専門誌として高いレベルにあると考えられる。
センダンの成分の解析が次につながる。抗がん剤として認可されていくためには、今回の成果に加え、センダンの成分が、がん細胞に働く仕組みのさらなる解明が必要だ。
最近のがん研究は、標準的治療に利用される抗がん剤(がん細胞の増殖抑制や細胞死を誘導する薬剤)の開発に加え、がん患者の遺伝子を調べて最適な薬を選ぶ「がんゲノム医療」が重視されている。その視点でしっかりした戦略と沖縄ならではの方向性での開発が必要不可欠になってくる。
(2020年4月19日掲載)