親戚28人は虐殺された…アフガニスタン出身男性が語るタリバン(前編)


この記事を書いた人 Avatar photo 玉城江梨子

 イスラム主義組織タリバンが政権樹立を急ぎ、抵抗勢力との激しい戦闘が起きているアフガニスタン。同国出身で、沖縄県内在住の男性はアフガニスタン国内での少数派民族で、タリバンに親戚らを虐殺された経験がある。残忍さを目の当たりにしたからこそ、祖国の現状や残された友人、知人らの身を案じている。「タリバンは残忍だ。明日は何が起こるか分からない」とおびえ、現地の情報をかき集める日々だ。
 

 1996年にタリバンは首都カブールを制圧した。タリバンは国内の少数派民族を迫害してきた。男性の家族を含む地元の人々は少数民族で、タリバンの標的にされてきた。

 幼い頃、父が複数回、タリバンから暴力を振るわれた。命の危険を感じ98年末、全てを手放し、家族でパキスタンへ移り住んだ。避難生活は3年で、うち1年は難民キャンプで過ごした。貧しい暮らしだったことを覚えている。

 男性は「虐殺の前に移り住んでいたため、生き延びることができた」と振り返る。パキスタンへ避難している間に、地元でタリバンによる虐殺があったためだ。この事件は、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチがまとめた報告書に記録が残っている。

 男性のいとこやおじを含む28人が手を後ろに縛られて銃殺されていた。「タリバンは人種や民族など、自分たちと異なっていることを理由に罪のない人たちを殺していた」と振り返る。「暴力的な政権だった。20年たってタリバンが変わったとは思えず、怖い」と語った。

 米軍の撤退に伴ってタリバンは短期間のうちに勢力を強め、カブールを制圧した。男性は「残された人たちが無事でいてほしい」と祈る毎日だ。

「人生最悪の悪夢」だった一時帰国 感じた恐怖…アフガニスタン出身男性が語るタリバン(後編)に続く