具体的な説明なく、給付までに申請17回・・・コロナ支援金「不備ループ」に憤り


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提出した資料の不備を伝える通知の一部内容(読者提供)

 新型コロナウイルスの流行拡大に伴う緊急事態宣言の影響緩和を目的に中小企業庁が給付する一時支援金を巡り、給付希望者が何度申請しても書類の不備などを理由に給付に至らない事態が起きている。国会でも問題視され、「不備ループ」と呼ばれる。那覇市の自営業の40代男性も5月から8月までに、申請を17回繰り返した。不備を指摘された箇所を修正しても手続きは進まず、審査体制を疑問視した。

 一時支援金は緊急事態宣言による飲食店の時短営業や、不要不急の外出自粛の影響を受け、今年1~3月の売り上げが50%以上減少した業者を対象とする。事業継続のために最大60万円を給付し、インターネットを使って申請する。申請は6月に締め切ったが、不備通知を受けた対象者には個別に延長期間を設けられている。

 男性によると、確定申告書などの必要書類をそろえ、那覇商工会議所による事前確認を経て、5月13日に初めて申請した。しかし、同26日に窓口の「一時支援金事務局」から届いたメールは、書類の不備を伝えていた。その日のうちに書類を修正し、再び申請したが、一週間後に不備が再度伝えられた。

 メールには「追加で必要な事項がございました。14日以上修正が行われなかった場合(中略)給付ができない場合がございます」と記されていた。指示に沿って専用サイトにアクセスしても「取引が確認できる請求書・領収書の提出が確認できませんでした」などと大まかな記載があるだけで、男性は具体性を欠いていると困惑した。

 男性は那覇市や名護市に設置されたサポート会場も訪れ、不備を指摘された資料を持ち込んだ。相談員は「不備を解消する手伝いはするが、審査する側ではない。どうすれば給付につながるかは教えられない」と告げたという。男性はこの対応に「具体的な助言ができないのはなぜか。連携が取れていないのではないか」と憤った。

 8月2日までに申請を16回繰り返した。最初の申請から3カ月以上が経過した同30日、審査に通った。

 那覇商工会議所の担当者によると、男性以外にも不備ループに悩む相談者がいるという。7月15日には参議院内閣委員会で田村智子議員(共産)が「出口の見えない不備ループに陥っている人が少なくない」と指摘した。

 消費者法などに詳しい安里長従司法書士は「1件の不正を取り締まるために過剰審査をしているように見える。専門家が読んでもすぐには理解できない通知内容で、何を修正すればいいのか分かりづらい」と指摘し、申請者に分かりやすい手続きを求めた。

 中小企業庁の担当者は本紙の取材に、不備ループに対する不満の声も届いているとした上で「窓口とのコミュニケーションがうまく取れていないと考えている。不備の指摘を細分化し、サポートの拡充をはかるなど対応したい」と答えた。一方、持続化給付金の不正受給などを挙げ「適正に給付するために審査は厳正に実施されている」と強調した。

 一時支援金の審査業務を受託するデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーは取材に「個別の案件には答えられない」とした。

 一時支援金には8月24日時点で約57万件の申請があり、約55万件に給付した。

 (名嘉一心)

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