本島南部で未成年者らが飲酒した後、このうち1人の少年(18)が車に残されて熱中症で亡くなった件で、亡くなった少年の両親が15日までに、本紙の取材に心境を語った。理容師になることを目標にしていた少年は、資格取得のため専門学校で学んでいた。両親は「これからという時だったのに」と言葉を詰まらせた。
9月、仏壇があるリビングには、まっすぐな視線で髪をカットする少年の写真や、校内のコンテストで優勝した時の髪型の模型などが遺品として並んでいた。「ただ、ただ、生きていてほしかった」。両親は静かに、時に口ごもりながら語った。
少年は小中学校時代は野球に打ち込んできた。高校生になると、ファッションへの関心が高まり、理容師に憧れた。夢をかなえるため、今年4月に専門学校に進学したばかりだった。校内コンテストでカット部門の1位になったことを母親に伝え、送迎する車内でうれしそうに話していたという。母親は「手先が器用で、好きなことに熱中する子だった」と誇らしげに話した。
専門学校の担当教員も、少年が「絶対理容師になる。絶対に国家試験に受かる」と意気込み、独立して店を構える夢を語っていたという。教員は「家族を持ち、自宅の1階で店を開くのが夢だった。センスがあったのに」と惜しんだ。
同じ高校と専門学校に進学した友人は突然の訃報に落ち込み、数日間学校に行けなくなったという。少年はこの友人に「家族の髪をカットしたい。早く理容室でアシスタントとして働き、一緒にカットを究めよう」と語っていたという。この友人は、少年が亡くなる直前に一緒にいたグループには含まれていない。
両親は少年が飲酒している事実を把握していた。何度か注意したが、飲む回数や量までは知らなかったという。父親は「息子が酒を飲んでいたことは悪い。私たちがもっと強く言っておけばよかった」と繰り返した。
県内では集団飲酒で補導される未成年の事案がこれまでも報道されている。父親は「二度とこのようなことが起きないでほしい」と訴えた。
(古川峻)