【識者談話】米軍を追認、日本の根深い病理 汚染水引き取り(佐藤学・沖国大教授)


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 米軍が再び下水道に汚染水を放出するよりはましだが、日本政府の負担で処分することになった。日本という国は米国と対等な主権国家ではなく、尻ぬぐいをする立場だということだ。「何をしても最終的に日本政府が対応してくれる」という米軍の姿勢を追認することになる。

 米軍に掛かる経費について、守ってくれているのだから仕方がないと不問にする風潮がある。本来は国家の尊厳を唱える人たちこそ、怒らなければおかしいが、そうなっていない。

 「中国の脅威」や「日米安全保障体制が大事」という話で判断が止まってしまっているからだ。国政与党だけでなく、野党もほとんどの党がこの議論に組み込まれている。脅威があるとはいえ、米軍駐留の全てを正当化すべきほどの危機ではない。

 米国が憲法を超えた存在として日本のトップにいるという構図が国民の骨の髄までしみ込んでいる。占領された途端、マッカーサー元帥を「神様扱い」でありがたがるようになり、従順な同盟国になった。こんな国は他にない。こうした心理は日本国民の病理で、根深い問題だ。

 (政治学)