県議会、防止に後ろ向き 県議パワハラ疑惑 問われる自浄作用


社会
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県議のパワハラ疑惑に関して行われた県議会の緊急質問=17日

 17日の県議会9月定例会本会議は、県立中部病院で発生した新型コロナウイルスの大規模クラスター(感染者集団)を巡り、沖縄・自民の照屋守之県議から叱責(しっせき)を受けた病院事業局職員が心身の不調を来し、休職に追い込まれたとする問題で揺れた。県側が同問題に絡める形で、県議を含む公職者からの不当な働きかけから職員を守るための取り扱い要領を公文書で示したことに対し、議会側は調査権行使を萎縮させる効果があるのではないかと反発を強め、文書を取り下げさせた。一方で、照屋氏のパワハラ疑惑の検証や対処は先延ばしにされたままとなり、県議会自らハラスメント防止のルール整備や再発防止を講じる姿勢は見えてこない。

 17日に本会議場で行われた緊急質問で、照屋氏の言動が高圧的で「パワハラに該当する」(謝花喜一郎副知事)とした県側の見解に対して、自民側は「一方的な決めつけだ」と反発した。照屋氏の言動で体調が悪化したという県職員の訴えに否定的な質問も出るなど、パワハラ疑惑をかけられる会派所属議員を擁護する姿勢が目立った。

■県は不信感

 議員に配布された資料では、7月初旬の照屋氏と職員の電話での会話が詳細に記された。職員は中部病院のクラスターについて「立て続けに怒鳴り続け」られ、その直後から動悸(どうき)、冷や汗が続くといった症状が現れたと訴えている。照屋氏からは「(亡くなった)17人の命を何だと思っているんだ」などの言葉があったという。

 照屋氏自身は17日の本会議を欠席。県に対する緊急質問に立った自民会派の県議は、「診断した医師は誰か」(仲里全孝氏)と質問するなど、照屋氏の発言と職員の体調不良の因果関係を重ねて追及。照屋氏と県職員の会話が録音されていないことを確認し、「あそこまで明確に覚えているのならすごいことだ」(西銘啓史郎氏)などの発言もあった。

 実態解明のためとして自民会派は照屋氏への聴取も含めた第三者委員会設置を求め、赤嶺昇議長の預かりとなった。議場でのやりとりに、ある県幹部は「議員の特権意識の中で、威嚇、どう喝することを普通と思っているのではないか」と、議会の対応に不信感を隠さなかった。

■調査権との線引き

 今回のパワハラ疑惑は、行政の監視の役割を担う議員の、調査権行使の在り方を問うことにもなった。

 ある県議は高圧的な言動はあってはならないとしつつ、「中部病院のクラスターの件では多くの死者も出した。重要な案件では、問い合わせの口調も厳しくなってしまわないだろうか」として、照屋氏の県職員への言動もクラスター問題を巡る「調査権」の一環としておもんぱかる。

 一方で、議員による行政職員への威圧や密室での口利きの強要などにつながることを防ぐためのルールが県議会で整備されておらず、議員の調査権行使が威圧につながらないかという“線引き”の難しさを抱える。

 企業や行政組織でハラスメント防止対策の整備が急速に進む中で、立法を担うはずの県議会でコンプライアンス(法令順守)向上の制度改革が立ち遅れている実態は否めない。

 ベテラン県議は、立場が強い議員と職員の関係性の中ではパワハラが生まれやすいとの認識を示しつつ、民間企業で実施されているような研修などについて「行われた記憶はない」とする。その上で「調査権はあるが、議会は社会通念とは別で良いというわけにはいかない。自浄作用をどう働かすか。パワハラに該当するかどうかは置いといても、今回の事案はそれを考えるきっかけになったのではないか」と述べた。

 (大嶺雅俊)