「茅葺きは貧乏の象徴」と思っていた染織家が沖縄移住で気づいた手仕事の魅力


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ゆがふ舎展で、手仕事の魅力を語る平井真人さん=10日、石垣市

 【石垣】石垣市の市民会館でこのほど、八重山を含む全国の作家34人が染め物や織物、焼き物、手工芸品などを展示する手仕事・共生「ゆがふ舎」展が開かれた。主宰したのは、那覇市在住で染織家の平井真人さん(70)。神戸市にある平井さんの生家の古民家「ゆがふ舎」を復元するに当たり、平井さんが気付いた手仕事の魅力を伝えることが目的だ。

 平井さんの生家は、19世紀に建てられたとされる茅葺(かやぶ)き屋根の古民家で、神戸市の登録有形文化財に指定されている。「ゆがふ舎」展は、その古民家の復元に携わるメンバーらによる作品展だ。

 元々、「貧乏の象徴のようで生家を大切に思っていなかった」という平井さんだが、1978年に沖縄に移住した後、考えが変わった。地元に愛着を持って暮らす沖縄の人々に触れる中で、生家を見つめ直した。

 専門家に修繕を依頼すると、家にはアイヌや朝鮮半島由来の技術が使われていたことを告げられた。コンプレックスに感じていた生家が「グローバル」なものだったことに誇りを持てた。そして、自分が知らない先人たちの技が生家に使われていることを知り、手仕事の豊かさを感じた。生家には「平和で豊かな世」の意で、うちなーぐちから「ゆがふ舎」と名付けた。

 今回の展示会には、そのゆがふ舎の復元に関わる人たちを中心に全国から34人が参加し、染め物や織物、絵画などを出展した。この中には八重山関係者7人も含まれ、それぞれ焼き物や八重山古来の紙、伝統的な凧(たこ)などを展示した。

 会場を訪れた石垣市の浦崎敏江さん(70)は、自らも八重山上布やミンサー織りをしているといい「手作りは心が和む。展示を見て世界が広がった」と創作意欲が刺激されたようだった。

 平井さんは「手仕事こそが日本の美術だと感じている。現代社会は都会や西洋の価値観に合わせようとしがちだが、土地に合った豊かな手仕事の文化の美しさを伝えていきたい」と話している。展示は9~11日の日程で開催された。