7月1日時点の県内地価は、前年比の平均変動率が全用途でプラス1・6%と上昇を維持したものの、上昇率では4年ぶりに全国首位を明け渡した。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、県経済全体が落ち込む現状を反映した。地域別に見ると那覇市の商業地の平均変動率は下落に転じ、コロナ以前は空き店舗の見当たらなかった国際通りでも、テナント募集の張り紙が目立っている。コロナ禍が長期化し、先行きが不透明な状況で土地取引の停滞が表面化している。
国土交通省の統計によると、2020年の県内土地取引件数は前年比6・1%減の1万5612件に減少した。取引された面積は計995ヘクタールにとどまり、元号が平成になった1989年以降で初めて1千ヘクタールを下回った。コロナ禍の収束が見通せず、長期的なリスクとリターンの予測が立てづらいことから、土地取引は様子見感が生じている。
■支援効果が下支え
第3次産業が多く製造業の乏しい沖縄は、他府県に比べてもコロナ禍のマイナス影響が強く表れている。観光客の激減によって、土産店や飲食店の売り上げは大きく減少している。
一方で、行政の補助や金融機関の資金繰り支援などによって、手持ち資金の欠乏には至っていない所有者も多い。過去の不況時のように、不動産を安売りする動きは現在のところ表面化していないという。
県地価調査分科会の濱元毅代表幹事は「強気の価格を維持する売り手と、もっと安くなるのではと考える買い手の間に価格ギャップが生じている」と土地取引の現状を指摘する。
店舗の賃貸仲介などを手掛ける県内の事業者は、小規模な物件には複数の問い合わせが入るなど需要は強いとした上で、「ワクチン接種後の回復への期待感があることなどから、家賃相場は大きく下がっていない」と説明する。金融支援が不動産の需給バランスを下支えしている格好だが、同事業者は「今後支援策の終了と客足の回復するタイミングがずれると、苦しくなるかもしれない」と先行きを注視している。
■マンション苦戦
マンション販売は苦戦が続いている。数年前までは着工して棟上げまでに大部分が成約していたが、現在は売れ行きが低迷する物件も多くなっている。
OK不動産(那覇市)の照屋健吉代表は「コロナ前に土地を購入したマンション物件は、土地代や建設費用のコストを反映して販売価格が高くなる。県民の所得で支払える水準を超えてしまい、売れづらくなっている。場所が良くない物件はかなり厳しい」と話す。
木材や鋼材など資材価格の上昇も響いている。建築物の鉄筋、鉄骨に使われる鋼材は、鉄鉱石価格の高騰や鉄スクラップの流通量減少によって需給が世界的にひっ迫している。
りゅうぎん総合研究所の及川洋平研究員は「鋼材の価格上昇は長期化するという見方もある。民間の新規開発案件にとってはマイナス要因になり得る」と指摘した。 (沖田有吾)