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金融ジェロントロジーとは? 高齢社会を経済学で考える<けいざい風水>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「金融ジェロントロジー」という言葉をご存じでしょうか。「金融」と、「老年学」を意味する「ジェロントロジー」を組み合わせたもので、加齢に伴う身体能力や認知能力の変化、行動変容などが経済・金融行動にどのような影響を与えるのかを、医学、経済学、老年学などを組み合わせて研究する学問領域のことです。“人生100年時代”や“老後資金2000万円不足問題”なども起因し、超高齢化社会においてこの「金融ジェロントロジー」が注目されています。

 65歳以上の人口比率が21%を超えた社会を超高齢社会と言いますが、日本は少子化と長寿化を背景として、2020年には65歳以上の人口比率が28%に達しており、既に超高齢社会の段階です。2045年には65歳以上が人口の36%、75歳以上も21%に増えると予想されています。

 また、高齢化の進展により認知機能の低下した高齢者の増加も見込まれており、厚生労働省では2020年に認知症の人の数が600万人を超え、団塊の世代が75歳以上となる2025年には約700万人と、高齢者の約5人に1人まで増えるとする推計もあります。

 認知機能が低下すると、高齢者本人が、お金に関する意思決定や判断を行うことは困難になります。「金融ジェロントロジー」の研究が進めば、高齢者の認知機能の低下に備えた早期発見、認知機能の維持・改善につなげることが可能となり、金融機関がこれまで提供できなかった高齢者に寄り添った金融サービスの提供ができることが期待されます。

 (沖縄銀行営業推進部お客様相談室室長 比嘉勝也)