浅瀬に広がる“草”<北谷の海辺散歩・生物調査から>8


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昔はジュゴンもいたと考えられる北谷の海草藻場=8月、北谷町(町教育委員会提供)

 水深の浅い砂地には海草藻場と呼ばれる草原が広がります。波静かな環境下で発達し、アマモ類などの海草がびっしりと海底を覆います。北谷でも浅瀬のところどころで小さな海草藻場が見られます。陸上からでも緑色に見えるので気が付くかもしれません。

 海草藻場の海草類は、ジュゴンやアオウミガメの餌になります。また海草藻場はさまざまな生き物が子ども時代を過ごす場所であり、生き物に必要な栄養分を作り、水質をきれいにするなど、大切な働きが多くあります。

 北谷の国指定史跡「伊礼原遺跡」からは、縄文時代に作られたジュゴンの骨製アクセサリーが出土しています。現在は見ることができませんが、数千年も前の北谷の海ではジュゴンがゆったりと泳ぎ、海草を食(は)む姿が日常の光景だったのかもしれません。

(小澤宏之・沖縄県環境科学センター所長、藤彰矩・北谷町教育委員会学芸員)