沖縄銀行を傘下に置く銀行持ち株会社「おきなわフィナンシャルグループ(OFG)」が1日、発足した。これまでグループの中心だった銀行を取り巻く環境が激変する中で、持ち株会社の下に銀行やリース会社、証券会社を並列に置き、非金融サービスの拡充を図り新たな収益の確保を模索する。中でも新体制への移行に先駆けて7月に設立した、地域総合商社「みらいおきなわ」の成否の行方に注目が集まっている。
地方銀行を取り巻く経営環境は厳しさを増している。超低金利による他行との競争や異業種からの参入で、収益性が低下する。新型コロナ感染症のまん延をきっかけにした新たな生活様式や多様な価値観への対応も迫られ、融資だけでは顧客のニーズに応えられない状況も生じる。
事業領域の拡大
1日付で設立したOFGを頂点とした持ち株会社体制に改めることで、沖銀を含む子会社へのガバナンス(企業統治)を強化し、資源の適切な配分で持続可能な経営を目指す。
新たな事業領域への挑戦として、地域総合商社のみらいおきなわがある。
みらいおきなわは、取引先に対する(1)販路開拓支援(2)コンサルティング事業―の二つを事業の柱に据え、県内企業の成長を後押しすることによる県経済への貢献を掲げる。これまで銀行が行ってきた資金の供給にとどまらない、幅広いサービスの展開が必要との認識に基づいている。
みらいおきなわは、IT企業「ココペリ」(東京)が提供する経営支援プラットフォーム「ビッグアドバンス」を活用し、取引先の販路拡大の支援に取り組んでいる。サービスは全国で50を超える金融機関が導入する。県内の事業者がプラットフォームに登録すると、金融機関が持つ顧客ネットワークを通じて、自社の商品を全国の企業にアピールできる。
相乗効果
外食やホテル、食品製造などを手掛けるジェイシーシー(糸満市)は、今年6月からビッグアドバンスの運用を始めた。自社で製造するケーキの売り込みをかけると、とんとん拍子で商談がまとまり、1カ月後には商品を発送するまでに至ったという。
担当者は「サービスを利用して1カ月で契約までこぎ着けられるとは思わなかった」と驚いた様子で語る。ビッグアドバンスによる出荷先の獲得も含め、ジェイシーシーは現在、月産2万個以上のケーキを製造・出荷する。コロナ禍前の2019年との比較でも4倍以上の成長に結びつけている。
みらいおきなわの木村政昌常務は「銀行の培ったネットワークを生かしながら、これまで弱かったコンサルティングを強化することで、地域の課題解決に貢献することができる」と語り、グループ内のシナジー効果を強調する。
日銀那覇支店の飯島浩太支店長は1日の会見で「銀行本業は利ざやが縮小傾向にあり、ホールディングス(持ち株会社)としてさまざまなビジネスで収益を上げるという方向性はいいと思う」と語り、事業領域の拡大に積極的に乗り出す地銀の取り組みを評価した。
(小波津智也)