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失業保険給付がコロナ禍で急増、長期化の懸念<けいざい風水>


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 沖縄県内の雇用環境は、新型コロナウイルス感染症の影響拡大により依然として厳しい状況が続いています。「コロナ解雇」という言葉をたびたび耳にするようになったとともに、有効求人倍率や完全失業率といった関連する各指標もコロナ禍以前に比べ低い水準が続いており、その長期化が懸念されます。

 雇用環境の現況については、雇用保険(失業手当)の給付状況からもその一端を知ることができます。2020年度の雇用保険の受給者実人員(月平均)は6223人と前年度の約1・36倍、総支給額は約88億8千万円で前年度の約1・39倍となりました。過去10年間の推移をみてみると、これまで低下傾向にあった受給者数および支給額が、2020年度で大きく増加したことが分かります(図参照)。

 月別でみると、最も支給額が大きかったのは20年9月で約9億4千万円(前年同月比約1・7倍)となっており、従来の観光シーズンにおける需要減が影響を及ぼしたとも考えられます。直近においては、21年度の第1四半期(4~6月)で約20億8千万円(前年同期比約1・11倍)となっており、依然として高い水準にあります。

 今後においては、影響の大きい観光業などからの産業間移動も含め、多くの労働者の転職・再就職が続くと想定されます。不慣れな職場環境、また、依然として続くコロナ禍での業務従事を踏まえ、定着率を高める上では、労働者自身の努力はもちろんのこと、雇用者側における職場環境の整備やそれに資する行政支援の拡充などが期待されます。

 (おきぎん経済研究所研究員 與那覇徹也)