瀬長亀次郎さん没後20年 復帰50年へ不屈館で資料掘り起こし


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瀬長亀次郎さんがキューバを訪問した1986年の未公開写真の展示を計画している不屈館の内村千尋館長=4日、那覇市若狭の不屈館

 米統治下で圧政と闘った瀬長亀次郎さんが2001年10月5日、94歳で亡くなって5日で20年となった。那覇市若狭の「不屈館」は瀬長さんに関する資料を展示し、戦後の沖縄の歴史を今に伝える、数少ない民間の資料館だが、存続が危ぶまれる事態になっている。新型コロナの影響で2カ月近くの休館を経て10月1日に再開したが、来館者が激減し運営状況が厳しいという。瀬長さんの次女の内村千尋館長(76)は「今、頑張らなければ」と話し、来年の復帰50年の企画展示に向け、精力的に資料の掘り起こしを進めている。

 不屈館は2013年に開館。行政からの援助を受けず、毎月100万円近くの維持費を会費や入館料、本の売り上げなどでまかなっている。コロナ前には、より広い場所への移転も検討していたが、検討作業は中断。運営資金が年内にも底をつく見通しだといい、会員や寄付を募っている。

 内村館長は来年の復帰50年の節目に、未公開資料を企画展示し、講演会も開いて来館者を呼び込みたいと計画する。その展示の一つが衆院議員時代の海外での活動だという。米国による戦争や他国への介入を批判し、同じ考えの国や市民と連帯を広げた瀬長さんの思いを紹介する。

 73年6月にベトナムを訪れ、独立と自由を尊ぶ建国精神に触れた感慨を記した当時の日記や、86年2月のキューバ共産党第3回大会に出席し、革命の英雄、故フィデル・カストロ氏と同じ壇上で写る写真なども展示する予定だという。

 没後20年となるが、瀬長さんに関する書籍は最近、相次いで出版され、映画も公開されるなど、沖縄の戦後史や瀬長さんの足跡に光が当たっている。内村館長は「現在の問題に通じる、戦後の米統治下の歴史を知ることができる。ぜひ県民にも展示を見に来てほしい」と話した。

(中村万里子)