16歳、日本軍の兵舎で働く 高良初枝さんの体験 母の戦争(2)<読者と刻む沖縄戦>


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現在の那覇市山下町周辺

 高良初枝さん(92)の沖縄戦体験を手紙にまとめた娘の仲村和子さん(72)=与那原町=によると、初枝さんの父は戦前、フィリピンに出稼ぎにいっていました。兄は出征しています。初枝さんは40代の母マンチさんや祖母、弟と那覇市の山下町で暮らしていました。

 国民学校を卒業した初枝さんは日本軍の兵舎で働くようになりました。16歳くらいのころです。そのころ、一緒に働いていた1人の女性の行方が分からなくなり、騒ぎになりました。

 《母たち20歳までの女子は、近くの日本軍部隊の兵舎の炊事や掃除を手伝うことになりました。夜は家族の元へ帰れたそうですが、1人の知人が行方不明になり、帰ってこなかった。「日本兵との間で何かあったのだろうか」と思っていても、みんな口をつぐんで声を上げることはなかったといいます。》

 行方が分からなくなった女性は初枝さんの同世代です。「母によると、住民はみんな、黙っていたといいます。日本軍が怖かったんでしょうね」と和子さんは考えています。

 兵舎で働いていた頃、初枝さんは日本兵から軍歌や戦時歌謡を習ったといいます。「暁に祈る」「出征兵士を送る歌」「麦と兵隊」などです。

 「兵隊から教わった軍歌を私にも教えてくれました。今でも軍歌を聴くと母は表情が変わり、シャキッとします」と和子さんは語ります。

 


「読者と刻む沖縄戦」を再開します。母の戦争体験をまとめたお手紙を紹介します。