[日曜の風・香山リカ氏]弾圧は正しかったのか  高江機動隊派遣違法 


この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

  名古屋からうれしいニュースが入ってきた。2016年7月、東村の高江でアメリカ軍のヘリパッド建設工事が再開される際、警備のため愛知県が機動隊を派遣したのは違法とした住民訴訟で、控訴審判決が出たのだ。

 地裁判決では愛知県の住民らの訴えは退けられていたが、7日の名古屋高裁では逆転。派遣を決定する際の手続きに違法性があったことが認められ、県警本部長は約110万円を賠償するよう命じられた。

 「司法は生きていた」と喜びがこみ上げる一方で、5年前の7月のことがよみがえった。私も高江に出向いて、工事の監視のため地元住民が建てたテントを訪れたり、土砂などを積んだトラックに「平和の島を返して」などのプラカードを掲げる人たちの横に立ったりして2日ほどをすごした。
 その後、東京に帰るため名護市まで送ってくれる人の車に乗ったところで、いきなり機動隊から「停止して」と言われたのだ。理由を聞いても教えてくれず、飛行の時間が迫っていると伝えても、無表情で「動かないで」と繰り返されるだけ。同時に止められた何台かの車の中には、トイレも水分補給もできず体調を崩す人もいた。

 結局、駆けつけた弁護士が交渉してくれて3時間ほどで私たちは“解放”されたが、権力の理不尽さを肌身で感じた時間はもっと長く感じられた。
 ネットには当時、そういった機動隊の弾圧的な行為に対して「仕事なんだから仕方ない」と同情する声さえあった。しかし、全国から集められた機動隊員に聞いてみたかった。「静かな生活を求めて非暴力的に抗議をする人たちに、一方的に力を振るうのは、本当はどんな気持ちだったのですか」と。今もその疑問は消えない。

 今回の名古屋高裁判決は、沖縄と全国との連帯を示す証しとなった。月末には東京高裁でも同様の裁判の判決がある。この機会に、高江に派遣された機動隊員たちは、「あの弾圧は人間として正しかったのか」と、そっと自問してほしいと願っている。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)