自然破壊か、機能回復か 第3次やんばる訴訟、きょう判決


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国頭村が機能回復整備事業として伐採した森林の跡地=国頭村宇良地区、2017年2月(喜多自然弁護士提供)

 国頭村が2016~17年度に宇良地区の村有林約3ヘクタールを伐採し、その後植林した事業を巡り、補助金支出が適正かどうかを問う「第3次やんばる訴訟」の判決が12日、那覇地裁で言い渡される。伐採された土地は世界自然遺産登録地域内ではないものの、やんばる国立公園内にある。隣接地ではヤンバルクイナやノグチゲラの生息が確認されるなど、希少種の宝庫になっている。県側は森林の機能回復整備事業だとし、正当性を主張している。

 「樹齢60年ほどの樹木が生え、やんばる本来の自然があった。森林としての機能は高い場所だったはずだ」。住民側代理人の喜多自然弁護士は、伐採前の状況をこう指摘する。住民側の調査では、ノグチゲラが営巣することで知られるイタジイや、国内最大のドングリの実を付けるオキナワウラジロガシの大木が切られた跡があったという。

 訴状などによると、国頭村は沖縄振興の一括交付金制度を使い、対象区域の樹木を全て伐採した後に植林する事業を実施。県から村に16年度分として約584万円、17年度分として約287万円が交付された。住民側は「生物多様性豊かなやんばるの森を破壊するものだ」と批判。補助金の支出は違法だとして、当時の県幹部に賠償させるよう県に求める住民訴訟を2017年12月に起こした。

 県側は対象地を含む周辺一帯がかつてパイン畑として利用されており、森林としての機能は低い場所だったと反論。村の森林整備計画でも木材生産の維持を図る土地に区分されているとし、機能回復整備事業に該当するとした。住民側が証拠として提出した、希少な動植物が多数生息する様子が撮影された隣接地の動画については「あくまでも隣接地のもので、事業地の状況を示すものではない」とした。

 喜多弁護士は「やんばる全体の保護を考え、自然を生かしたまちづくりに政策転換すべきだ」と訴えた。
 (前森智香子)