いじめや部活動を巡る問題などについて、教育現場が適切に対応できるよう弁護士が法律的な助言をするスクールロイヤー制度が沖縄県立学校で運用開始してから、10月で1年がたつ。制度の利用件数は徐々に増えつつあるが、浸透しているとは言い難い。一方、県教委義務教育課の調べによると、市町村教委の73%が県によるスクールロイヤー制度の設置を希望するなど、学校現場の期待は高い。制度の認知度をより深めると同時に、教職員が利用しやすい制度への改善も求められている。
県立学校でのスクールロイヤー制度は2020年度に21件、21年度は8月末時点で17件の相談実績がある。国頭、中頭、那覇、島尻、離島の5地区を8人のスクールロイヤーで対応している。相談を受ける以外に、「法的ないじめの捉え方」「成人年齢引き下げについて」など、学校からのリクエストに応じて教職員向けの校内研修も実施している。県教委県立学校教育課は「相談件数は右肩上がりで増えている」としながらも、「まだ学校現場への認知が低い。制度があることを知っていても、弁護士に相談してもいい内容だろうかと、制度の利用を躊躇(ちゅうちょ)してしまうケースがある」と分析していて、研修などを通して制度をより知ってもらえるよう計画を進める。
県教委義務教育課は、小中学校への制度導入を目指して市町村教委への調査などを進めている。昨年6月には全市町村を対象に、制度設置に関する希望調査を実施した。30市町村は県による設置を希望し、小規模自治体や離島など11町村は「役所の顧問弁護士で対応可能」などとして県による設置を希望しなかった。
義務教育課は現在、県立学校での制度の運用方法を参考に、市町村向けには地区ごとに配置する方向で検討している。市町村ごとの配置だと、財政状況で配置に格差が生じることや、人材確保が難しいなどの課題があるためだ。「まだ実際に配置するめどは立っていない」としながらも、「教育現場からの要望が多いことははっきりしている」と、設置に前向きな姿勢を見せている。
(嘉数陽)