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コロナ感染者を減らしたい…報道ができることは?<取材ノート・新聞週間2021>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
緊急事態宣言が明け、混雑する沖縄都市モノレール。人出が増えたことで、第6波が懸念されている=1日、那覇市の県庁前駅

 第74回新聞週間が15日、始まった。今年はスポーツの祭典東京五輪・パラリンピックが開かれる中、新型コロナウイルスが猛威をふるい、県内の感染状況は世界最悪レベルとなった。日々、目の前の取材現場で、記者は苦悩し、迷いながら記事を書いている。難局に立つ記者の思いを連載で紹介する。


 「息子夫婦が新型コロナウイルスに感染して入院する。感染が疑われる孫を預かろうと思っている」。高齢の女性から編集局へ電話を受けた。自分も感染することを覚悟した上で、家族内感染が起きた場合、親が子どもと共に療養できる施設を県が確保するべきだとの意見を書いてほしいとの訴えだった。私も妊娠中の妻と2人の子を育てており、状況を考えると切実さはよく分かった。児童相談所などが一時的に預かる仕組みもあるが、離ればなれにはなりたくない。人ごととは思えず、記事化した。

 県内では流行第4波から第5波にかけて感染者が急増。県の対策本部も度々県民に行動自粛を訴えたが、デルタ株の猛威で感染者は膨れ上がっていた。医療関係者が「誰かが亡くならないと病床が空かない」と語る状況で、感染者を抑えるためにはどのような報道が必要か。不安をあおるのではなく当事者意識を持ってもらうためには現場の医師や患者らの思いを知ってもらうことが必要なのではと考え、その声をできるだけ多く集めようと取材を始めた。最期を迎える重症患者と家族の画面越しの看取(みと)りの様子、患者の負担が大きい人工心肺装置「ECMO(エクモ)」を導入するシビアな判断に医師らが神経をすり減らす一方、感染対策をせずに陽性になり、運び込まれる患者に向き合う医療関係者の徒労感。入院中の苦しみに加え、退院後も手足のしびれやけん怠感で生活に支障があると訴える元患者。コロナに振り回された人々の「一人でも感染者が減ってほしい」との思いを伝えた。

 流行第5波は収束したがその要因は明確になっていない。医療従事者は「県民個々の(身近な)生活圏で感染者が増え、自粛が強まったかもしれない」と推測する。緊急事態宣言が明けた10月、新規感染数は毎日数十人で推移している。だが、医師らは県内外への移動や会食が増える年末年始に第6波が起きる可能性があると懸念している。第5波までに学んだ教訓を生かし、流行の波を抑えていくために報道は何ができるか。感染が落ち着いた今、改めて考え模索し続けている。

(嘉陽拓也)