南城サキタリ洞から国内最古の着色装飾品 識者の見方


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 南城市玉城のサキタリ洞遺跡で約2万3千年前の赤く着色された装飾品(貝製ビーズ)が確認された。県立博物館・美術館によると、着色された装飾品としては国内最古。この発見の価値や今後の研究に期待されることなどを2人の識者に聞いた。


赤い着色、世界にも事例 名古屋大学博物館講師 門脇誠二氏

門脇誠二氏 

 旧石器時代の中で、石のビーズは国内の他の遺跡にも事例はある。しかし、サキタリ洞遺跡で確認された、顔料で色が付けられた貝殻のビーズという組み合わせは新しい事例だ。

 世界最古の着色された装飾品は約8万2千年前のもので、モロッコのタフォラルトにある遺跡で見つかった。地中海の貝殻に、こちらも赤い顔料が使われていた。貝製ビーズとして使われたとみられる。

 赤色がよく使われたのは、酸化してさびのように赤くなる顔料が手に入れやすかった可能性が考えられる。また、赤を好む趣向性があった可能性もある。

 サキタリ洞遺跡の着色された装飾品のように、世界の博物館の中でも、調査を終えて、いったん展示されるなどしていた資料をもう一度よく調べてみると、細かい点から発見につながったという事例もある。分析技術が進歩していく中で、これまでに見つかったものを改めて分析していくことも大切なことになるだろう。(先史考古学)


顔料利用研究の契機に 沖縄国際大准教授 宮城弘樹氏 

宮城弘樹氏

サキタリ洞遺跡で見つかった約2万3千年前の着色装飾品は、解明されていなかった旧石器時代の顔料利用の研究に向けた一つの足がかりになると考える。装飾品から顔料が検出された最古の事例になるだろう。これをきっかけに研究が進むことが期待される。

 装飾品を意図的に赤く色を塗ったのか、体に付いた色が偶発的に装身具に着色したのかなど、いろんなパターンが想定できる。今後もあらゆる可能性を念頭に置き、注意深く発掘する必要がありそうだ。

 複数の貝の装飾品が見つかった中で、1点だけ着色されていたことが気になる。他は色が落ちたのか、あるいは貝製のビーズを使ってネックレスを作る際に「白、赤、白」など色の変化を表現したのかなど、今後の研究に期待したい。

 石垣市の「白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴遺跡」や「港川人」が発見された八重瀬町の遺跡の出土品に、顔料が塗られた資料が含まれていないのか、再調査するなど丹念に調べていく必要があるだろう。 (考古学)


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