沖縄県立博物館・美術館は21日、南城市の観光施設「ガンガラーの谷」内のサキタリ洞遺跡の発掘調査で、約2万3千年前の赤く着色された装飾品(貝製ビーズ)が見つかったと発表した。同館によると、着色された装飾品としては国内最古。着色が確認されたのは、長さ12・8ミリ、幅7・9ミリのニシキツノガイ。同館は「身体への装飾の一環として装飾品へも着色した可能性がある。古来から豊かな精神性を持っていたことがうかがえる」と指摘し、沖縄に住んだ人類の生活や精神性などの解明につながるとしている。
赤い着色が確認されたニシキツノガイは、細長いストローのような形。2013年に同じ年代の地層から見つかっていたニシキツノガイや二枚貝などの貝で作ったビーズ十数点を再調査し科学的な分析を重ねたたところ、ニシキツノガイで作ったビーズ1点のみに赤い着色がみられた。着色部分には「ベンガラ」の名称で知られる酸化鉄由来の赤い顔料が確認された。年代は、出土した地層に加え、周辺にあった炭化材や貝類などを炭素年代測定した上で特定した。
国内最古の顔料は、東京都の武蔵台遺跡で見つかった約3万5千年前の鉄石英などによる顔料の固まりなど。この年代の顔料は、装飾品への着色は確認されていない。さらに国内最古の装飾品は、北海道の柏台1遺跡で出土した石に穴を空けたビーズの約2万8千年前となっている。
今回、確認されたニシキツノガイのビーズは「着色された装飾品」として国内最古。サキタリ洞遺跡では2018年に県内最古となる約5500年前(縄文時代前期に相当)の赤色顔料が見つかっていたが、今回の発見で大きくさかのぼり、旧石器時代から顔料が使用されていたことが明らかになった。
県立博物館・美術館の田名真之館長は21日に開いた記者会見で「古代の人々の暮らしは日々、食料をも求めてさまよい歩き、飢餓と隣り合わせの暮らしを送っていたと考えられがちだ。しかし、実際には現代人と同じように装飾品や顔料で身を飾る豊かな精神性と『余裕』を兼ね備えた人だったと考えられる」と指摘した。今後について「継続的な調査研究によって、沖縄の旧石器人の社会や文化の具体像に関する新たな知見が期待できるものと考えている」とコメントした。
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