ジェンダー平等 差別是正に積極的措置必要 矢野恵美・琉大法化大学院教授<識者の見方・衆院選2021>4


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矢野 恵美氏

 ―今回の衆院選では、かつてないほどジェンダー平等に焦点が当たっている。

 「ジェンダー平等に向けた社会的機運が高まっているのは間違いない。女性政治家の数は増えてきたとは言える。しかし、世界の中で見ると、2021年の政治分野のジェンダー・ギャップ指数は全155カ国中、日本は147位だった」

 「ジェンダー平等への関心が高まってきているのは歓迎すべきことだが、女性政治家の比率を見れば、日本は世界でワースト9位という状況だ。メディアや有権者は候補者に、『世界の状況から見た日本の現状をどう考えているのか』と聞いてほしい」

 ―どうしてこのような結果になっているのか。

 「日本では政治家やリーダーは男だと、幼少期から思い込まされていて、人々が違和感を持たない。さらに女性は性別役割分業を基本とした働き方を強いられる。女性が政治家になろうとする時だけ、家事、育児、介護との両立が当たり前とされる。しかも、その不平等さをおかしいと思っている人が少ない」

 ―変えていくためには。

 「政治家にも意識を変えてもらいたい。ただ、男性でもジェンダー問題をよく理解している人もいることを忘れてはならない。今回で言えば、例えばメディアが候補者から聞き取った選択的夫婦別姓制度導入について、保留や反対とする人には、詳しく理由を聞いてほしい。選択的夫婦別姓の反対は『強制的夫婦同姓』だが、そういったやり方をしているのは先進国では日本だけだ。反対派は『家族の絆が壊れる』と主張するが、他国では壊れていない。日本だけ家族の絆がもろいということか」

 「日本でも世論調査ではかなりの人が選択的夫婦別姓に賛同しているが、政府の動きは鈍い。世論調査の結果が反映されるよう、特に若い有権者には投票してほしい」

 ―若者の投票率向上は課題だ。

 「ジェンダーの問題や、自分の投票行動がどういう意味を持つのかを学ぶ機会が与えられていない。『自分が投票しても何も変わらない』との失望感もある。これは若い人の責任ではない。私たち、大人の責任だ」

 「女性の比率に話を戻すと、政府は『20年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする』との目標を掲げたが、達成できず先送りした。多くの国は女性議員の比率を定めるクオータ制を導入済みだ。女性に対する構造的差別が根強く、もう個人の努力では問題が解決できない日本でこそ『ポジティブアクション』(積極的差別是正措置)としてクオータ制導入も必要だ。ジェンダー問題についても、候補者の言っていることをよく見て、投票先を決めてほしい」
 (’21衆院選取材班)