PFAS汚染、原因究明を 砂川かおり氏・沖縄国際大講師<識者の見方・衆院選2021>5


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―世界的に気候変動や再生エネルギーへの対応が議論になっている。主な論点や沖縄への波及は。

 「県内でも年平均気温が100年当たり1・21度の割合で上昇し、海水温上昇によるサンゴの白化や漁業への影響は既に深刻だ。県や企業、市町村などが温暖化対策や脱炭素に向けた行動計画・指針などを策定しており、対策は待ったなしだ」

 「再生エネルギー開発は、生活協同組合などで採算の取れるビジネスとして拡大している。小規模な取り組みの蓄積に着目し、同時に省エネにも力を入れるべきだ」

―今年7月に本島北部地域や西表島などが世界自然遺産に登録された。観光や社会活動との関係をどう考えるべきか。

 「世界自然遺産登録は、登録地域の自然の価値を認めて破壊などから保護することが目的で、観光産業拡大へのお墨付きではない。観光化は環境容量に配慮し、自然を過剰利用しない形で行う必要がある」

 「一方で、自然を保護しながら人々が住み続けることができる仕組みを、地元発信で作ることも重要だ。候補者には登録地とその周辺地域の持続的な利用を、地元の人々や利害関係者と一緒に考えてほしい」

―県内では米軍基地周辺での有機フッ素化合物(PFAS)の水源汚染が問題になっている。

 「汚染状況の全容が解明されていない。下水処理場汚泥の肥料としての利用もあり、環境中をPFASがどのように動き回っているかを把握する必要がある」

 「(水道水などから暫定指針値超えのPFOSなどが検出された)金武町などでは住民の血液検査などが必要だ。調査で米軍基地との因果関係をはっきりさせ、原因者に費用負担を求める必要がある」

 「日本ではPFOS、PFOAのみが規制対象だが、米国では汚染が深刻な州で規制対象のPFASを増やす所もある。欧州では4700種以上のPFAS全体の規制についても議論が始まっている。候補者には、海外の先進的な事例を参考に規制の在り方を議論してほしい」

―有権者として環境問題をどう考えるべきか。

 「各選挙区で那覇軍港の浦添移設、辺野古新基地建設、先島への自衛隊配備など軍事化由来の環境問題がある。住民がコントロールできないものが生活環境に入るという意味で、原発に似ている。生活圏の問題は自分たちで解決できることが重要だ」

 (’21衆院選取材班)
 (おわり)