大空に大蛇が舞う 鹿児島県知名町の伝統芸能 2年ぶりに奉納


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 【沖永良部】鹿児島県知名町上平川の殿智(とぅぬち)神社で10月20日、鹿児島県無形民俗文化財指定の伝統芸能である大蛇踊りが奉納された。地域住民たちが見守る中、軽快な太鼓の音に合わせて大蛇をかたどった人形がうす暗い空の下で四方八方に舞い踊った。

3本の竿でつり下げ大蛇を巧みに操る保存会メンバー=10月20日、知名町上平川の殿智神社

 大蛇踊りは、同神社の祭り神である幸山政孝(まさこう)が、薩摩藩から帰島する途中で嵐に遭い明国に漂着。現地で覚えた踊りに、帰りに立ち寄った琉球の歌と踊りを取り入れて1700年ごろに同集落に伝えたと言い伝えられている。

 踊りは物語になっており、和尚が留守中の寺に美しい娘が訪れ、小僧たちが招き入れると大蛇に化け、退治するというあらすじ。終盤の大蛇が舞うシーンは圧巻で、約10メートルの3本の竿を中央に向かって交差させ、3方向からひもを引き大蛇を巧みに操って舞わせる。

 例祭の斎主であり、上平川大蛇踊り保存会会長の西村兼武さん(72)は、若手の頃から継承のため写真や映像で記録してきたという。2017年に国立劇場おきなわで行われた研究公演でも実演された。同神社では19年に会場用に土地を造成して再び奉納されるようになったが、昨年は新型コロナウイルス感染防止のため行えず、今年は2年ぶりの奉納となった。

 西村さんは、「気持ちが合わないと大蛇は上手く操れない。総踊りにも人手が必要で、大蛇踊りを通して地域の融和と一致団結の精神が育まれている。これからも毎年奉納する、地域の皆さんもそう思っている」と期待を込めた。

 (ネルソン水嶋通信員)