原油価格高騰で県内産業の経営を圧迫 企業「値上げ回避限界」 コロナ禍で電気料金、原料価格上昇


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ポリ袋の原料となるポリエチレンについて「昨年より約4割値上がりした」と話すオキポリの末吉正三社長=8日、南城市大里古堅のオキポリ

 世界的な原油価格の高騰が家計を圧迫しているほか、産業にも大きな影響を及ぼしている。県内ではレギュラーガソリン価格が13年ぶりの高水準となり、燃料価格の上昇に伴う電気料金の値上げ幅も全国で最大となる。一方で、新型コロナウイルス禍による需要減退はいまだ回復の力強さを欠いており、企業からは「価格転嫁をこらえているが限界だ」と悲鳴が上がる。

 原油価格の高騰を受けて、合成樹脂や繊維など石油由来の素材メーカーは相次いで値上げに踏み切っている。原材料の値上がりは県内の製造業に大きな影響を与えている。

 レジ袋などを製造するオキポリ(南城市)は、原材料のポリエチレンなどの価格上昇が経営を圧迫している。末吉正三社長は「ポリエチレンの価格は昨年に比べて約4割上がっている。原料メーカーからは、さらに上がると聞いている」と肩を落とす。コスト削減の努力は続けているが、工場で使用する電気代も増加しており、企業努力の及ばない原料価格の高騰によって経費が膨らんでいる。

 石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の産油国による閣僚級会合が4日に開かれたが、追加増産は見送られ、燃料価格は当面は上昇が続くという見方が強い。これに対し県経済は観光が完全に回復していないこともあり、オキポリでは問屋からのレジ袋の注文は減少したままだという。

 末吉社長は「保存が利く商品であり、海外にも競争相手がいる。価格への転嫁は難しい。どうすればいいのか頭を悩ませている」と話した。

 包装資材などを製造する本島南部の企業も「今年に入って原材料価格は3~4割上がった。円安や電気代の上昇も加わり、すごい影響を受けている」と苦境を語る。自社でも一部商品の値上げを取引先に通達したばかりだといい、「安定供給を図るため、製品価格に転嫁しないとやっていけない」ともらした。

 クリーニングの丸三(那覇市)の担当者は、洗濯で使う溶剤の価格はまだ上がっていないとした上で、「これまでの流れでは、ガソリン価格が上がった後に溶剤(価格)も上がる。いくらになるのかが分からないので心配だ」と今後の影響を懸念している。コロナ禍によるリモートワークの普及や冠婚葬祭の減少などでクリーニング需要の減少傾向がある一方で、集荷や配送の業務でガソリン価格高騰の影響が出ていることも不安材料となっている。

 2021年度県マンゴーコンテストで県知事賞を受けたマンゴー農家の仲村盛宏さん=沖縄市=も、「年明けは重油価格の動向を見ながらになりそうだ」と警戒する。例年2~4月末にビニールハウス内に重油で稼働する加温機を設置して室温調整するといい、「加温機の温度設定を上げれば燃料コストも比例して上がる。重油の価格高騰がいつまで続くか分からない」と先行きを不安視した。

 (沖田有吾)