介護利用者と施設をつないで15年、惜しまれ幕を下ろす 市民相談員なは


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最終号となる活動報告書を手にする仲本しのぶ代表理事(右)、大田友子副代表理事=9月、那覇泉崎の琉球新報社

 介護施設の利用者の声を施設側に伝え、サービス向上につなげる「市民介護相談員なは」(那覇市、仲本しのぶ代表理事)がこのほど、2020年度までの15年間の取り組みについて報告書をまとめ、活動に幕を下ろした。06年度から那覇市内を中心に43施設・事業所と契約を交わし、相談員が訪問活動を続け、利用者と施設側の橋渡しをしてきた。20年度は新型コロナウイルスの影響で活動を制限されたが、15年間で応じた相談は計3万2272件に上った。

 20年度は17カ所の施設・事業所と契約した。このうち、コロナの影響で5カ所は訪問がかなわなかった。相談員の気付きを含めた同年度の相談件数も計391件で例年より大幅に減少した。内訳は施設環境に関するものが53件、職員の対応48件、医療・健康45件、レク・余暇活動44件―などだった。

 相談内容を見ると、コロナに関する案件が目立つ。「(面会制限があり)孫に会えない」「マスクをずっとしているのはきつい」「どこにも出られず、ユンタク会もなくなった」「カラオケができない」など、入所者の生活にさまざまな影響があったことがうかがえる。

15年の活動内容がつづられた報告書最終号。利用者の声と相談員の気付きは3万2千件を超えた

 行政からの委託ではない全国初の自主派遣事業として06年に活動を始めて15年。身体拘束や排せつ、入浴などに関する相談員の“気付き”が改善に生かされたケースも少なくなかった。

 排便のにおいがしても定時の入浴まで待たされたり、柵で四方を囲まれて身動きが取れない状態に置かれたりするなど、外部から利用者の実態が見えづらい課題も施設側に指摘してきた。「排せつや入浴はスタッフも重労働。悪意があるというより、実際には(問題であることに)気付いていないことがほとんどだった」(大田友子副代表理事)

 活動を始めた当初は、訪問先の施設から「行政の回し者か」と警戒される時期が続いたという。しかし、利用者から困りごとを丹念に聞き取り、それを施設側に伝えて一緒に改善に取り組むうちに「すごい活動ですね」と理解されるようになった。活動終了を伝えた際には、解散を惜しむ声も寄せられた。仲本代表理事は「役割はあったのかなと思うとうれしかった」と振り返った。

 一方で、行政には支援への感謝と残念な思いが交錯する。介護施設の現状やその課題を報告書にまとめてきたが、仲本代表理事は「一方的な報告で終わってしまい、課題解決に向けた協働がなかったと感じる。そこは残念だった」と語る。活動を終えるに当たって、虐待が減らない現実などを踏まえ、今後の行政の積極的な介入の必要性に期待を込めた。
 (當山幸都)