【深掘り】沖縄全域が「訓練場」に…中国を念頭に日米一体化 民間地の使用、常態化を懸念


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宮古島・石垣島北方とみられる海域で共同捜索救難訓練を行う米空軍の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイ(下段左)と、MC130J特殊作戦機(上)、航空自衛隊のUH60J救難ヘリ(米空軍353特殊作戦群のフェイスブックページより)

 防衛省は11日、沖縄などを含む統合演習の実施と、米空軍・航空自衛隊の宮古島・石垣島北方での共同訓練、米インド太平洋軍司令官と自衛隊統合幕僚長の与那国駐屯地訪問などを相次いで発表した。日米双方が対中国を念頭に、自衛隊と在日米軍の一体化を強める姿勢がより一層浮き彫りになった。県内の民間地や民間港を利用した訓練の常態化も懸念される。

 中国は沖縄からフィリピンに至るラインを「第1列島線」とし、周辺での制海権確保の姿勢を示している。自衛隊は、尖閣諸島をはじめ海洋進出を図る中国への対抗策として、沖縄本島、宮古島、石垣島、奄美大島への対艦ミサイル部隊配備などを進めている。

 統合演習での民間港使用は、南西諸島各地に点在する駐屯地・基地間の移動ルートの確認が目的とみられる。部隊移動のルートに民間区域が含まれることは、有事の際に民間港湾・空港や、民間地に展開した部隊も敵対国の攻撃対象となる危険性をはらむ。

 統合演習には在日米軍も参加する。空自は9日の米空軍との共同訓練は「共同捜索救難訓練」とし、戦闘時に脱出した軍用機搭乗員の救助などを想定している可能性もある。

 陸自が離島奪還などを想定して創設した水陸機動団は、ブルービーチ訓練場(金武町)などで米軍との訓練に参加。離島を占拠し臨時拠点にする米海兵隊の戦略「遠征前方基地作戦(EABO)」と重なる。

 浮原島訓練場(うるま市)では2日、自衛隊と在沖米軍が離島統合防災訓練を実施。日米双方は「あくまで防災目的」とする中、日米のヘリが島から近海の海自輸送艦を経由し、沖縄本島の自衛隊・米軍施設に負傷者役を搬送する訓練もあった。

 10日に就任した在沖米軍トップ、ジェームズ・ビアマン四軍調整官は報道各社のインタビューで「沖縄は自衛隊と訓練・潜在的任務を行う上で理想的な位置にある」と強調した。

 一方、自衛隊が県内の民間港・民間地を利用した統合演習を予定していることを巡り、玉城デニー知事は11日の記者会見で「情報収集に努めて関係機関と連携し、適切に対応していく」と述べるにとどめた。

 県内の民間地を使用する自衛隊・米軍訓練が常態化すれば、沖縄全域が「訓練場」と化す。県民の基地負担増への懸念は今後一層高まりそうだ。(塚崎昇平)