貴重な尖閣の自然「まだまだ研究必要」 親子2代で調査の男性が回顧録発行


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冊子を手にする正木譲さん=2日、石垣市

 【石垣】元南大東島地方気象台長で、親子2代にわたり尖閣諸島へ上陸した経験を持つ石垣市の正木譲さん(87)の回想をまとめた冊子「尖閣への想い遙かなり~父子2代上陸調査の夢果たす」(尖閣諸島文献資料編纂会)が、このほど発行された。正木さんは「尖閣には貴重な自然があるので、まだまだ研究が必要だ」と語り、外交により尖閣諸島を取り巻く課題は解決されるべきだと話している。

 正木さんが尖閣諸島を訪れたのは1968年のことだった。八重山気象台(現石垣島地方気象台)に勤めていた正木さんは、学術調査団に同行して上陸。海洋観測に携わった。

 正木さんの父、任さんも現在の石垣島地方気象台にあたる石垣島測候所で勤務していた。そして1939年に資源調査のため尖閣諸島に上陸し、島の生態系などを調べた。

 任さんは正木さんの少年時代に亡くなり、尖閣諸島を訪れた際の写真などが遺品として残った。父を亡くした正木さんは、遺品のアルバムを眺めながら、珍しい動物たちが暮らす尖閣諸島への憧れを強くしていった。

 その後、父と同じ道に進んだ正木さんは、同じく尖閣諸島への上陸を果たす。そして父が残した写真と同じ光景を目の当たりにした。父の姿を思い浮かべて手を合わせたことは「感慨深かった」。

 親子2代にわたって尖閣諸島の自然観測に携わった経験から、島々の環境の希少性を指摘した上で「尖閣は日本のものだ」と強調する。ただ、いたずらにナショナリズムをあおることへは嫌悪感を示す。「日本は外国の顔色をうかがわず、正々堂々と外交によって尖閣への主張をするべきだ」と話している。