[日曜の風・香山リカ氏]地元の魅力見直そう ビッグボスの目


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 私のふるさとである北海道と沖縄がつながった。国頭村で行われているプロ野球・北海道日本ハムファイターズの秋季キャンプを、新監督に就任した新庄剛志氏が訪れたのだ。自らを“ビッグボス”と名乗る新庄監督の動向は、全国のメディアが連日、報道している。本人も移動前にSNSで「速攻 沖縄そば食べに行こう」と発信し、到着後は報道陣に「名護で食べました」と話すなど、沖縄のアピールに努めていた。キャンプ地の国頭村の風景も全国のテレビニュースで何度も流れた。

 北海道は札幌への一極集中が進み、それ以外の地域では鉄道の路線がどんどん廃線になったり医師不足で病院が閉院したりと、暗い話題も少なくない。観光地としては人気だが生活者の実態とは隔たりがある点は、沖縄と同じかもしれない。さらに今、沖縄の漁業は軽石被害で打撃を受けているが、北海道の漁業は赤潮の被害が深刻だ。

 それでも沖縄、北海道、両方の人たちは、「負けずに明るい気持ちで進んでいこう」と前を向いている。これもまた、日本の北と南に位置する二つの場所の共通点といえる。

 新庄監督は、就任記者会見で「北海道と日本ハム、生活が一緒のチームにしていきたい」と抱負を述べた。視野を全国や世界に広げるより先に、まず地元にしっかり根差す。そして、そこの良さを積極的に伝えていく。ハデさばかりが伝えられる“ビッグボス”だが、そのあたりは実に堅実なのだ。

 地元をもう一度、見直してみよう。そこにはまだまだ、たくさんの魅力や可能性があるはず。それが発見できれば、そんなステキな場所で生活している自分にも誇りや自信が生まれてくるのではないだろうか。北海道に根付くことを誓いながら、キャンプ地の沖縄にも温かい目を注ぐ“ビッグボス”は、そんなことを教えてくれた気がする。これからも北海道と沖縄、ときには助け合い、ときには良きライバルとして、一緒に頑張っていきましょう。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)