里親は短期間からでも 糸満・支援事業所 委託同意に課題


社会
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 糸満市にある「里親支援よしみず」は一時保護を含めて、数日から数カ月の間、子どもを家庭に迎える「里親」を増やし、里親制度の裾野を広げる事業を実施している。

 2019年に県から里親リクルートトレーニング事業を受託した。社会福祉法人袋中園(同市)がよしみずを開設し、現在は10組の里親とともに、短期間の里子委託や乳児の緊急時の一時保護に対応している。

 櫻木典子事務局長は「短期間の協力なら里親登録へのハードルは下がる」と意義を語る。反響は大きい。ただ、しっかり寄り添って対応するため、里親の育成は、本島の浦添市以南の地域で対応しているという。

 里親登録に向けた研修は、袋中園の乳児院で行う。子の特性や里親の事情を踏まえて、マッチングできるのも強みだ。里親支援員の岩本紗也佳さんによると、子を預かる里親の下に通って悩みを聞く。発熱時などにもきめ細かく対応できるという。

 受託した子や一時保護の乳児が実親に戻った後には、里親が喪失感を抱きやすく、岩本さんは「数日後に寂しさが増す人もいるので、過ごした日々や対応の良さを振り返りながら気持ちを整理していくんです」と支援員の役割を語る。

 実親の子どもを思う気持ちが里親制度の課題になっている部分もある。

 2019年に県がまとめた県社会的養育推進計画では、児童養護施設などに入所する子どものうち「(里親養育が適当であるが)保護者の同意が得られない」割合が20.6%となっている。児相によると、医療的ケアが必要な子や、きょうだいで入所する子などは施設で生活する割合が高いが、未就学児は愛着形成が重要なため、里親で養育を検討する。

 しかし、子どもを取られてしまうと考えたり、施設にいればいつでも面会できると考えて同意しない実親もいる。その場合は、実親の生活改善を支援しながら、機会を見て里親への理解を促すとともに、子どもに対しては施設長の判断で週末里親などを実施していくという。

 櫻木事務局長は「子どもたちがどこにいた方が幸せか。それを考えた時、さまざまな形の里親が増えることが重要。里親制度が特別なものでなくなるために、協力してくれる人の輪が広がっていくことを期待している」と語った。

(嘉陽拓也)