【深掘り】なぜ?検疫で陽性の米兵が隔離なく移動…水際対策の現状は


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 新型コロナウイルスに感染した在沖米海兵隊員が米軍内の規則に従わず、民間航空機で県内に入っていたことが判明した。米軍人が日本に入国する際の隔離措置は、米軍の責任で一般の外国人と同等の14日間の期間で隔離を実施することになっている。隔離中は飛行機をはじめ公共交通機関を使用することはできず、県外の在日米軍施設・区域に留め置かれる運用のはずだが、安易に破られ得る現状が浮き彫りとなった。

 外国人が日本に入国する場合、検査で陽性、陰性に関わらず隔離期間が設けられる。米軍関係者の場合は空港から待機施設までの移動を含めて、米軍管理下で隔離期間を過ごす。

 入国の際の検査でコロナ陽性だった場合、民間人は日本の検疫所が借り上げた車両で移動し、同所が借り上げたホテルなどで治るまで隔離される。米軍関係者の場合は、米軍の提供区域・施設内で療養することになる。隔離場所に移送する時点から米軍管理に置かれる。

 今回、海兵隊員は成田空港で入国した際の検査で陽性が判明しながら、米軍管理下に置かれることなく、翌日に国内線で那覇空港に移動していた。在沖米軍基地内の検査でも陽性となった後に県に連絡があり、事態が発覚した。県は搭乗した航空機内で海兵隊員の近くに27人が座っていたとして、健康状態を確認するなどの対応に追われることとなった。

 日米地位協定による検疫の免除で、米軍人が米軍機などで日本国内の米軍施設・区域に直接入る場合に、日本の検疫が適用できないという問題が指摘されてきた。民間空港を利用する場合には米軍人でも日本の検疫の適用を受けるが、国内の水際対策をすり抜ける形となった。

 入国者に対する検疫の隔離措置はあくまでも「要請」であり、米軍管理の方が罰則を伴うことから「拘束力が強い」との見方もある。米軍は移動の経緯を調査するとともに、罰則を科すことも含めた措置をとる構えだ。

 ただ、米軍内の規則に従わず、隔離措置を経ないまま日本国内を移動する米軍関係者が他にもいないかなどの疑念は残り、水際対策の課題を露呈している。