悩みながら共に歩む 周囲と笑顔に支えられ <記者、里親になる>5


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夕暮れ時、ケイ(仮名)と記者と妻=本島内

 ケイ(仮名)と暮らし始めてから2回目の秋を迎えた。成長を実感する日々だ。

 ケイとは別に、一時保護として緊急に子どもを引き受けた際、児童相談所からプライバシーの観点から写真を撮らないようにと告げられた。長期の養育を任されたケイの場合は一転して、成長の記録として写真をできるだけ残してほしいと言われた。ケイと一緒に暮らし始める前、施設で面会した時の写真も譲り受けた。

 実親と暮らせず、社会的養護にあるケイも自らのアイデンティティーを見つめる時が訪れるだろう。生い立ちを確認する上で写真や動画などは大切な記録になる。記念日に写真館で撮影したり、外で遊んでいる瞬間をスマートフォンで撮ったりしている。写真は日ごとに増えた。実親が見る日もあるのだろうか。

 里親制度は、困っている親子を社会が助ける仕組みの一つ。一方、愛情をもって接し、過ごした時間が長くなるほど、愛着が増すことも自然な道理だろう。ケイ以外の子どもたちとも一時暮らし、そして別れを経験した。別れがつらくないと言えば、うそになる。

 以前に預かった子どもが実親の元に帰り、私たち夫婦だけの生活に戻った後、妻が真夜中に起き出したことがあった。私が「どうしたの?」と聞くと、寝ぼけていた妻は「ミルクを作らなきゃ」と答えた。その時間に夜泣きをし、ミルクをほしがった子はもういない。

 一緒に過ごした時に見せてくれたように、子どもたちは今も笑顔だろうか。後日、担当職員から「子どもの体重が増えたと、実親さんが喜んでいた」と聞き、うれしかった。少しだけ心が軽くなった。

 里親だって悩む。同じ心の痛みも理解し合える別の里親の存在はありがたい。この連載で取り上げた先輩里親とは連絡を取り合い、相談することもある。沖縄県里親会は会員の里親同士が顔を合わせるサロンを定期的に開いたり、各種イベントを企画したりして、交流の機会を設けている。

 子どもの委託を決定できる児童相談所の職員とは別に、里親支援専門相談員(FCW)が七つの地区別にそれぞれ配置されている(10月現在)。FCWは里親からの子育てに関する相談に応じる。里親が別の里親から一時的な代行を担う「レスパイト」の際、里親同士の橋渡しもする。私たちの担当のFCWも電話連絡をくれたり、自宅に訪問したりして、ケイの体調や今後の養育の悩みなどを聞いてくれる。

 委託される子どもには虐待され、心理面でのケアも必要な事例がある。心理士などが配置された「こころさぽーと事業」も実施され、複雑な養育の事例に戸惑う里親に対して専門的な支援をする。

 毎朝、ケイが真っ先に起きる。かまってほしいと私たちを起こすように寝室で動き回り、笑顔を見せてくれる。これから困難があるかもしれない。時には一緒に悩んだり、泣いたり。「応援する人はたくさんいるよ」。ケイに笑顔で応え、そう伝えたい。
 (島袋貞治)
 (おわり)