小笠原諸島の海底火山噴火の影響とみられる大量の軽石が10月上旬に大東島地方で確認されてから、1カ月以上が経過した。被害は沖縄本島や周辺離島など広範囲に広がり、水産業や観光業などにも甚大な影響を及ぼしている。軽石が完全に県内から移動する時期は現時点で見通せず、宮古島など先島地方への漂着も予測される。影響が長期間に及ぶ可能性がある中、今後の予測や課題をまとめる。 (池田哲平)
本島周辺 滞留続く
■漂流の予測
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の気候変動観測衛星「しきさい」が15日に観測したデータによると、沖縄本島周辺に加え、宮古島の南東海域などまで大量の軽石が帯状に連なって漂流するのが観測された。
JAXAのデータ提供を受け、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が予測した「軽石漂流シミュレーション」によると、本島西部にある軽石は一部が北上し、黒潮に取り込まれ太平洋へと向かうが、多くは北風の影響を受けて本島西側などに滞留する可能性がある。少なくとも12月2日までの間、軽石が本島周辺に滞留する見通しだ。
推定に幅があるものの、風の影響が強い場合、今月20日ごろに宮古島への漂着が見込まれる。八重山地方にも一部は漂着する可能性がある。
琉球新報の取材に、JAMSTECの美山透主任研究員は「人工衛星のデータと海流を掛け合わせると、軽石はだんだんと西に行き、宮古島へかかる可能性がある。本島周辺に漂流する軽石も、北風に押しつけられる形で長期にわたってとどまることも考えられる」と指摘した。
建材、農業へ再利用検討
■撤去後の処分
県によると、一時、港が軽石で埋め尽くされた国頭村の辺土名漁港や安田漁港では、それぞれ800立方メートル以上の軽石が撤去された。撤去された後は港内や県有地、市町村有地などに移動し、仮置きされている。保管を続けるわけにもいかず、今後は処分を巡って議論が本格化する。
県が採取した軽石を検査したところ、有害物質は基準値を下回った。軽石は「廃棄物」の扱いとはならないため、当面は焼却や地中に埋めるなどの処分はせず、県は「再利用」する方向で検討を進める。
埋め立て用土砂やセメントなどの建築資材として使えるのかどうかについて、県建築技術センターは強度などを踏まえて利用方法の検討を開始した。農業用の土壌改良などへの活用も検討している。
17日に県庁で開かれた県軽石問題対策会議で、県環境部は「一般の家庭で軽石を利用する分において、何ら問題はない」との見解も示した。
魚競り価格に影響も
■漁業被害
県によると、12日時点で県内登録漁船の約52%にあたる1570隻が出漁を自粛する事態となっている。軽石を原因とする漁船のエンジントラブルは105隻で発生している。
養殖や蓄養魚が軽石をのみ込み、スギ15匹、グルクマ約500匹の死が確認された。
17日時点で水産業の被害額は算定できていないが、種類によって競り価格に影響も出ているという。
うるま市などで盛んなモズク養殖は、養殖網を海へ張り出す作業を行う時期を迎えているが、作業ができない状況が続いている。ヒトエグサ(アーサ)の養殖も、堆積した軽石で養殖網が埋まる被害が確認された。12月解禁のソデイカ漁への影響も懸念される。