米軍普天間飛行場で18日午後、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイによる物資のつり下げ訓練が確認された。過去に何度も落下事故を起こしたつり下げ訓練を市街地に囲まれた飛行場で実施することは、基地と隣り合わせの周辺住民にとって不安を一層高めることになる。名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府がその正当性を主張するために、繰り返し説明してきた「普天間の危険性除去」にも逆行している。この日、松野博一官房長官は、訓練に対しての評価を避けた。
海兵隊は今年7月にCH53E大型輸送ヘリがつり下げ輸送中に高さ2.4メートルの鉄製コンテナを渡名喜村沖に落下させたばかりだ。2020年2月には、トリイ通信施設(読谷村)の西1.3キロの海上で鉄製標的を落とした。CH53Eでの輸送中に不安定となったため、意図的に落下させた。
米軍は18日時点で、訓練に使った物資の中身について明らかにしていない。ただ、大きさ、重量にかかわらず、人口が密集する普天間の市街地に落下すれば、人命に直結する事態にも陥りかねない。
沖縄の日本復帰前の1965年には、読谷村で物資のパラシュート投下訓練中に約2.5トンのトレーラーが民家そばに落下し、下敷きになった小学5年生の女児が亡くなった。
民間機がつり下げ輸送中に物体を落下させた場合「重大インシデント(事案)」と認定され、運輸安全委員会の調査対象となるのが通例だ。一方、米軍は日米地位協定に基づく特例法で航空法の適用除外を受け、日米合意に基づき調査対象にもならない。こうした特権を背景に危険を伴う訓練を実施し、県内で事故を起こしている実態もある。
海兵隊は、離島などに臨時の拠点を設ける新たな戦略構想「遠征前方基地作戦(EABO)」の導入に取り組んでいる。拠点に物資などを持ち込むことができるつり下げ輸送は、重視される能力の一つだ。海兵隊は9日にも飛行場内でつり下げ訓練を実施していた。常態化すれば兵士の降下や物資の投下など、海兵隊が必要と考える他の訓練にも拡大する恐れがある。
普天間飛行場周辺では、ヘリの窓など落下事故が発生している。同飛行場は、市街地に囲まれている上に、米国の安全基準で滑走路の両端に設けるよう定められている、土地を利用しない「クリアゾーン」も十分確保されていない。本紙は18日朝から、沖縄防衛局に訓練の詳細や同局の対応を尋ねたが、この日夜までに回答はなかった。
(明真南斗)