「助けて」の注文待ってます 大学生が運営するカフェ「お手伝い」を提供する理由


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「GAKUSEI CAFE」代表の北琴美さん(右)と運営する名桜大生の比嘉麻人さん=10月26日、国頭村辺土名の「YANBARU HOSTEL」内

 国頭村辺土名にある、廃業したホテルを改装した「YANBARU HOSTEL(ヤンバルホステル)」の一角に、一風変わったカフェがある。学生らが運営している、その名も「GAKUSEI CAFE」。彼らが提供しているメニューは、コーヒーやホットドッグなどのフードと、住民からの求めに応じた無償の「お手伝い」。「助けてほしい」「サポートしてもらえないか」。寄せられる要望に応じて草刈りや清掃作業に当たる。「だれもが『助けて』を当たり前に言える社会にしたい。コーヒーは、そのきっかけの一つ」。カフェは、学生たちによる社会変革への挑戦の拠点となっている。(嘉数陽)

■可能性と成長

 カフェは2020年11月にオープンした。運営者は3人。代表の北琴美さん(25)以外は現役の大学生で、名桜大4年の比嘉麻人さん(21)と同大学4年の阿波根直汰(23)さん。さらに20人以上の学生がボランティアで関わり、高校生もいる。

 彼らの「社会を変えたい」という思いからカフェは誕生した。阿波根さんは以前、新型コロナウイルスの影響で多くの学生が「就職先がない」と苦しんでいることを、ヤンバルホステル運営者の小山健一郎さんに相談した。「学生が自分の可能性を感じられる場所がほしい」と求めた。

 ホステルの一角を学生らに提供し、カフェの経営を任せようと思いついた小山さんは奈良県出身の北さんに話を持ち掛けた。北さんはヤンバルホステルの宿泊イベントをきっかけに沖縄に移り住み、国頭村で保育士として働いていた。

 北さんの夢は虐待被害者を減らすこと。そのために「気軽に集まれる場所」「助けてと気軽に言える環境づくり」が大事だと常々考えていた。

 北さんは、カフェの取り組みで自分の夢も実現できると考え、阿波根さんの後輩である比嘉さんも一緒になって「無限の可能性と成長を共有する場所」づくりを始めた。

障がいのある子どもたちと一緒に、パラリンピックで使用するキャンドル作りをしたボランティア=7月、沖縄市のコザ運動公園(GAKUSEI CAFE提供)

■いつでも注文を

 開店を知らせるチラシに、コーヒーメニューは書かなかった。代わりに記したのは「学生のパワーでもっと沖縄県を盛り上げたい」「役に立ちたい」というメッセージ。

 「助けてって気軽に言える社会になれば、多くの人が支え合いの中でいろんなことを乗り越えて、自信と安心感を持って夢にチャレンジできるはず」と北さんは熱っぽく語る。そのそばで比嘉さんは「もちろん、一生懸命勉強したコーヒーの味も楽しんでもらいながら」と笑った。

 実際、これまで多くの「お手伝い」の注文を受けた。ヤギの散歩や草刈り、イベントでのボランティアなど多岐にわたる。国頭だけでなく、ヘルプの求めは中部や那覇からも寄せられるようになり、それぞれに応じて出向いてきた。

 カフェの客が地域を清掃してくれることもあり、集めたごみとコーヒーを交換する取り組みや、ヤンバルホステル内でのイベントも盛況だった。中高生や大学生らがダンスや特技を披露した時は、引きこもりの子どもがみんなの前で、笑顔でダンスを披露できた。

 カフェでは現在も、「自分の可能性を見いだせる」“新メニュー”を考案中。「困った時はいつでも、お手伝いのご注文を」。北さんらはいつでも、「助けて」の注文を待っている。

 カフェへの問い合わせは(電話)080(2514)4663。