「性教育は性暴力を防ぐ」虐待を生き抜いた助産師が伝えたいこと


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性教育の大切さについて語る助産師の東さよみさん=9日、県内

 国は毎年11月12日から25日までを「女性に対する暴力をなくす運動」期間と定めている。本年度のテーマは「性暴力を、なくそう」。若年出産のシングルマザーを保護するシェルター「おにわ」で寮母を務める助産師の東さよみさん(54)=県内在住=は、学校や公民館などで性教育に取り組んでいる。伝えるのは「自分の体は大事だよ」というメッセージ。性教育は性暴力を防ぐことにもつながる。「同意なしにコンドームを着けないセックスは、それだけで性暴力。性に関することは『嫌だ』と言った人の意見が通ると知ってほしい」と強調する。

「同意なきは性暴力」伝える

 京都府出身の東さんは沖縄に来て10年目。この間、クリニックや県のワンストップ支援センターで働き、女性たちの支援に当たってきた。「絶対に暴力を受けてほしくない。暴力を受けていい人は1人もいない」と強調する。

 クリニックで中絶した10代の女性たちと接する中で、若年妊娠の背景にあるのは「『嫌と言えなかった』『嫌われたくない』といった理由で、自分の意思ではないセックスが大半だと思う」と話す。

 東さんの母親も若年妊娠で高校生の時に東さんを出産した。東さんは虐待を生き抜いた“サバイバー”でもある。子どもの頃から「あんたはいらん子やった」と言われ続けた。心にふたをして生きづらさを抱え込んだ。10代後半で拒食と過食を繰り返し、30代まではふとした瞬間に、「死にたい」という思いにかられ続けた。

 そんな東さんに「ありのままでいい」と思わせてくれたのが性教育だった。第2子を出産後、30代で子育てをしながら助産学校に通い、助産師の資格を取得。性教育の学習会で自分の体と切り離せない性の大切さを実感できるようになった。「性は人間の生活の一部。食べることや睡眠とか全ての中に性がある」

 県内の学校で性教育に取り組む。女性の月経や、男性の勃起、精通といった体の生理現象を科学的に説明する。生徒たちには性感染症や妊娠のリスク、妊娠した場合の相談先、妊娠検査薬の入手方法、診療費、産むか産まないかまで考える必要性も話す。

 性暴力の背景について「ジェンダーバイアス(性に基づく固定観念や偏見)も強いと思う」と指摘する。欧米に比べ、日本の性教育は遅れている。「性教育」と言うと「いやらしい」などの拒否感覚が大人にもまだまだ多いと感じる。だからこそ今、考えているのは大人への性教育だ。「子どもの性被害や性加害を防ぐためにも大人が性への意識を変えていくこと、ジェンダーバイアスをなくしていくことが大事だと思う」と前を見据える。

  (中村万里子)