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苦しいときほど、やりたいことを思い続ける<伊是名夏子 100センチの視界から>110


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 わが家の休日の過ごし方は、子どもたちのリクエストで決めることも多いのですが、息子は愛読している「よみうり子ども新聞」に紹介されている場所を候補に挙げます。先日は「オリヒメ」という分身ロボットが働くカフェ「DAWN」に行ってきました。

 オリヒメがメニューの説明をしてくれて、注文を取り、席まで飲み物を運んできます。ロボットを遠隔操作するのは、日本全国・海外に住む重度障害のある人たちで、研修を受け、給料をもらい、在宅で働いています。いろいろな人が働けるというコンセプトは素晴らしいし、ロボットはかっこいいし、接客の仕方はリアルに働くカフェと同じで、操作する人それぞれのユニークさがあります。分身ロボットが当たり前に働くようになるかもしれない近未来の世界。それを目にした子どもたちの可能性は無限でしょう。

ロボットが飲み物を運んでくるカフェ「DAWN」

 自分がやりたいこと、行きたいところを見つけ、情報を集め、時間をかけて形にしていくことは大切だと私は思っています。なぜなら私の子どもの時の体験があるからです。カナダのケベック州の市民が、フランス語を公用語として勝ち取った記事を、小学生の時に読み、いつか行ってみたいと思い続けていました。

 そして22歳の時、カナダ旅行をすることにしたのです。西のバンクーバーから入り、目指すは東のケベックです。フランス語がメインに話される場所に近づくと、古いものを大切にするヨーロッパ文化が目立つようになりました。

 念願のケベックに到着すると、トラブル発生。階段、石畳だらけで車いすの移動がとても難しく、5分の移動のためだけに乗った車いすごと乗れるタクシーは、約6000円もかかりました。夢にまで見たケベックだったのに、まさか車いす移動が大変だとは。英語もほとんど通じないので苦労しましたが、城壁に囲まれた旧市街はきれいで、ずっと思い続けたケベックに来たことで、胸がいっぱいでした。

 これをやりたい、ここに行きたい、と思い続けることは、自分の強さにつながるでしょう。夢見がちと言われるかもしれませんが、苦しい時ほど、やりたいことがあると、気分を変えることができたり、あと少し頑張る力になることがあります。生きていくことはつらいこともたくさんあります。でもどんなに小さなことでも、ワクワク思えることがあるのなら、それを大切にしたいですね。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。