コロナ禍でがん検診の受診率低下 沖縄県内20年度 早期発見が遠のく恐れ


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 新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年度、沖縄県内の各市町村が実施するがん検診の受診率が低下したことが23日までに分かった。那覇市は胃がん検診の受診者が3割減るなど、厚生労働省が検診を勧める五つのがん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん)の全ての項目で受診率が下がった。沖縄市でも4項目で減少した。各自治体はコロナ禍の影響で受診控えが生じたことが原因と見る。感染拡大が続く今年も、昨年と同様の傾向が続いている可能性があり、がん治療で重要な早期発見が遠のく恐れがある。

 受診率で比較すると、那覇市は乳がんが前年度比5.2ポイント減の14.3%、肺がんは同4.1ポイント減の13.8%、子宮頸がんが同4.1ポイント減の16.8%、大腸がんが同3.7ポイント減の15.0%、胃がんが同3.6ポイント減の8.5%だった。

 沖縄市は胃がんが同2.93ポイント減の8.8%、肺がんは同2.39ポイント減の8.9%、乳がんは同0.9ポイント減の11%、大腸がんは同0.47ポイント減の7.95%。子宮頸がんは同0.3ポイント増の10.5%だった。

 那覇市医師会のまとめによると、20年の乳がん検診の受診件数は前年比22.4%減の1565件だった。

 受診率低下の背景にあるのが新型コロナウイルス感染症だ。人が集まる場所に行くことに不安を感じる人が増え、検診を避ける傾向が強まった。がん検診の一翼を担う地域の中核病院がコロナ患者の治療に関わり、受け入れ人数が制限された医療機関があったことも影響したとみられる。

 乳がん検診に詳しい那覇西クリニックの玉城研太朗医師(県医師会理事)は受診遅れにより、がんと診断された時の「しこり(腫瘍)が大きくなっている」傾向があると話す。腫瘍が大きくなれば抗がん剤治療や手術時の切除範囲が大きくなるなど「より強度の強い治療が必要」となり、患者の負担が増すと指摘。乳がんの場合は、腫瘍が小さいステージ1で見つかった時の5年生存率が99.5%に上るなど、早期発見が大事だとし「コロナが落ち着いている今、検診を受けてほしい」と呼び掛けた。(知念征尚)