「コロナ禍」実は人手不足…デジタル対応や生産性改善を りゅうぎん総研リポート


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 りゅうぎん総合研究所(伊東和美社長)は22日、新型コロナウイルス感染症の影響下での労働市場の変化についてまとめた調査リポートを発表した。日本の労働市場は、コロナ前から低賃金、長時間労働の是正や、正規従業員と非正規従業員の格差などの課題を抱えていたことから「コロナ禍を大きな転機として労働市場の改革を進め、労働生産性の向上に結び付けていく必要がある」と指摘した。

 コロナ禍で大きなダメージを受けた飲食業や宿泊業などの対面サービス業で雇用情勢が悪化する一方、入国規制による外国人の減少などによって全体的には人手不足が続いている。

 失業者を年齢別にみると、20代が他の年代に比べて上昇幅が大きかった。若い就業者が多い飲食業や宿泊業などでの雇用情勢悪化が影響したとみられる。

 失業のうち、急激に景気が悪化した2020年は労働需要の不足による需要不足失業率が上昇した。直近では、求職者と求人企業の間で、職種や条件面などのミスマッチがある場合に生じる構造的失業率が上昇している。

 新規求職者の就業状態別では、21年度上半期は在職しながら求職する人が前年同期に比べて増加している。コロナ禍の長期化により、経営の厳しい企業からの転職希望者が増えている可能性がある。

 政府が支給額引き上げなど雇用調整助成金の特例措置を導入し、事業者の多くが活用したことで、失業者数の大幅な増加を抑える効果があった。

 一方で、休業者数は大きく増加している。新型コロナ感染拡大以前の19年は月平均約2万2千人だったが、20年4月から21年9月は同約3万7千人に増加した。県内の雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金は、今年10月末時点で支給決定件数が約8万2800件、支給決定額は約652億7千万円となっている。

 働き方の面では、テレワークなどの導入が一気に加速。デジタル化は今後一層進むが、労働者の情報格差による雇用の二極化につながりかねないことから、同リポートでは、公的な職業訓練のプログラムにデジタル化に順応できるようなスキルを反映させる必要性を指摘している。

 最低賃金の大幅な引き上げは、コロナ禍で苦しむ企業にとって逆風となっているが、県内は非正規労働者の割合が4割を占めて全国で最も高いことから、底上げを通じた待遇改善は急務としている。企業側に労働生産性の向上など、雇用と待遇の両面を改善する対策が求められるとしている。

 金城毅上席研究員は、コロナ後に向けた展望として「政府は経済活動が再開されるのに伴い、雇用安定策から労働移動を促す雇用政策に軸足を移していく必要がある。流動性の高い労働市場の整備を進めていかなければならない」と指摘した。

 リポートの詳細はりゅうぎん総研のホームページに掲載している。