【記者解説】首里城・大龍柱、30年で「横向きから正面に」 「空白」埋める研究を


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 国の「首里城復元に向けた技術検討委員会」は、焦点だった大龍柱の向きについて、焼失前と同様に相対(向かい合わせ)で復元するという暫定的な結論を出した。正面向きの古写真が発見されながら、向かい合わせで復元するという結論は矛盾しているように見えるが、技術検討委は古写真も重要な資料と位置づけている。古写真より前に描かれ、龍柱が向かい合っている古文書も重視しているため、「横向きから正面向きに変わった」との見解を示すことで、双方を否定せずに結びつけた。

 復元に当たって最重視されている古文書は、首里城正殿を解体修理した時の公式記録である寸法記(1768年)と尚家文書(1846年)の二つ。いずれも大龍柱は向かい合っている。技術検討委は当時の王府絵師の技術力も調査し、正面が描けずに向かい合わせに描いたという推測を明確に否定。古文書作成時は向かい合わせだったとの立場を崩さなかった。

 技術検討委は尚家文書の作成時から古写真が撮影されるまでの約30年間に大龍柱の向きが変わったと指摘するが、研究者が膨大な資料を調べても、その証拠は見つかっていない。新たな資料が見つかれば再検討するという余地は残したが、現状を考えると、向かい合わせは限りなく最終結論に近い。

 技術検討委は「暫定的な結論」としたが、同じ理屈で正面向きを暫定的な結論とする選択肢もあった。向かい合わせとした説明責任は当然として、今後も「空白の30年」を埋める資料の発掘に取り組む責任もある。(稲福政俊)