那覇「裁判所通り」の並木が幹だけに…伐採に至った悩ましい事情


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害虫の被害により枝が剪定され、ほぼ幹だけの状態になったアカギ並木=11月30日、那覇市樋川の県道221号

 「裁判所通りの街路樹が無残に伐採されている。立派な木をなぜ切るのか調べてほしい」。11月下旬、りゅうちゃんねる取材班に調査依頼の電話が入った。剪定(せんてい)の方法に問題があるのかと思いきや、調べてみると小さな虫の存在が浮かび上がった。

 裁判所通りとは、那覇市樋川の那覇地方裁判所に面した県道221号のこと。那覇地方検察庁や法務局、弁護士事務所などが集中している。現場へ向かうと、街路樹は枝のほとんどが切り落とされ、ほぼ幹だけの状態になっていた。根元から伐採された木もある。以前は緑が映える並木道だったことを考えると「無残」の言葉がしっくりくる。

 切られた街路樹はアカギだ。沖縄ではなじみ深い常緑の高木で、琉球最古の歌謡集「おもろさうし」にも登場する。那覇市首里金城町の大アカギは国の天然記念物に指定されている。

アカギの幹にとまるヨコバイ科の虫

 親しまれていた並木が伐採され、地域住民も悲しんでいるのだろうと思い、周辺で聞き込みをすると「切ってもらって助かっている」と、意外な反応があった。常緑のはずの木の葉が茶色く変色し、落ち葉の量が増えていたという。「病気だった」との証言も得られた。

 道路を管理する県南部土木事務所に、伐採の理由を問い合わせると「主な原因は『ヨコバイ』だ」との回答があった。「ヨコバイ」とは、セミに似た小さな虫「アカギヒメヨコバイ」のこと。2019年6月に県内で初確認され、アカギの葉から樹液を吸って枯らしてしまう害虫として問題となった。裁判所通りのアカギもヨコバイの被害を受けていた。

 ヨコバイ対策は県の環境再生課が担う。同課の担当者によると、昨年は県内で7907本のアカギが被害を受けたが、今年は9218本に増加した。久米島でも新たに見つかるなど、被害は離島にも広がっている。

 ヨコバイの被害を受けたアカギは、葉がない状態まで剪定してヨコバイを追い払うが、葉が再び生えるとすぐに戻ってくる。現状では対症療法しかない「いたちごっこ」だ。

 同課は農薬による駆除を検討中で、本年度から農薬の調査やヨコバイの生態研究を始めた。すでに効果が見込める樹幹注入剤を選定し、早期に使用できるよう、農林水産省に要請している。

 県は海外の状況も調査中だが、防除に成功した事例は見つかっていない。アカギを守る取り組みは手探りの状態が続く見込みだ。

(稲福政俊)

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