【東京】沖縄県名護市在住で、「大袈裟太郎」の芸名でミュージシャンなどとして活動する猪股東吾さん(39)が、自身について取り上げた産経新聞社のウェブサイト向け記事で名誉を傷つけられたとして、同社に110万円の損害賠償を求めた裁判の第1回口頭弁論が7日、東京地裁(金田健児裁判官)であった。弁論後に会見した猪股さんは記事の影響で、脅迫やつきまといの被害にあった実態を訴えた。提訴は10月7日付。
訴状などによると、問題となっているのは同社が2017年11月にサイト上に掲載した「辺野古で逮捕された『大袈裟太郎』容疑者、基地容認派も知る“有名人”だった」と題する記事。17年11月に猪股さんが名護市辺野古の新基地建設への抗議活動中に逮捕された件を報じる内容で、逮捕について「朗報」「天誅(てんちゅう)が下った」「沖縄から追放、強制送還すべき」などと記している部分が、「名誉を毀損(きそん)する違法行為」とした。
猪股さんは会見で、記事掲載後に「ネット上での誹謗(ひぼう)中傷がより苛烈(かれつ)なものになった」と明かした。名護市内のスーパーで男性客から胸ぐらをつかまれ「殺すぞ」と言われたり、路上で罵声を浴びせられるなどの被害にも遭ったという。
猪股さんは、記事について「沖縄ヘイトの一形態だ」と指摘。代理人の神原元弁護士は、「ジャーナリズムという公器を使った暴力だ。『天誅が下った』などという記述が報道の世界で許されるのかを裁判で問いたい」と述べた。(安里洋輔)