【識者談話】不服審査法の趣旨に反する 辺野古不承認の審査請求(徳田博人・琉球大教授)


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徳田博人氏(琉球大教授)

 県は沖縄防衛局の埋め立て変更承認申請を不承認とした。地盤の安定性に関する最重要地点について調査不足および災害防止の検討が不十分で、改良後の地盤安定性・不確定性の考慮や環境保全、特にジュゴンへの影響が不明で、さらに普天間飛行場の早期の危険性除去という目的達成が不確実であることが理由だ。

 県の不承認決定に対して防衛局は、行政不服審査制度を用いて身内の国土交通相に県の決定を取り消すよう申し立てた。辺野古新基地推進を方針とする現政権の構成員である国交相に行政不服の手続きを取るのは公正さを欠く制度の乱用で、法の支配の原則や行政不服審査法の趣旨にも反する。

 防衛局は、埋め立てが始まる3年前の2015年、すでに地質調査業者から「長期の沈下」の懸念があることの報告を受けていたと報じられている。その事実を隠して防衛局は埋め立て工事を続け、十分な調査をせず、設計上は安全だと主張した。今回の不承認決定でも、地盤の安定性に関する最重要地点の調査不足が主な理由とされている。

 正確な情報を公開せず、県民投票の結果などの民意を無視し、不十分な調査に基づく防衛局の行為も、国は行政不服審査制度を使って適法だと身内の大臣に判断させてきた。民主主義の危機といってよい。

 今後、不承認決定をめぐって県と国との法廷闘争が予想されるが、日本の民主化や平和にもつながる闘いでもある。司法で正義は実現されるのか、司法の存在理由も問われる。
 (行政法)