日本復帰から半世紀…酒税軽減措置「ゴール」へ 段階的廃止に県内酒造業の今後は


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 2022年度の与党税制改正大綱がまとまり、県産ビールや泡盛に対する酒税軽減措置は段階的な削減を経て、泡盛は2032年、ビールなどは26年に廃止されることが決定した。1972年の日本復帰に伴う激変緩和措置として導入されて以降、半世紀にわたって続いてきた酒税軽減措置の「ゴール」がついに明示され、県内酒造業界は自立に向けた岐路を迎える。

 酒税の軽減率は、アルコール度数30度の泡盛で35%、ビールで20%となっている。1.8リットルの泡盛1升瓶だと189円、350ミリリットルの缶ビールで14円に相当する酒税が軽減されている。

 県によると2018年度までの軽減額の累計は、泡盛が452億6千万円、ビールなどが891億3500万円で、計約1344億円に上る。

 日本復帰に伴って国内大手メーカーが進出すると、資本規模が小さい県内酒造所は市場を奪われ倒産に追い込まれてしまうとして、オリオンビールや泡盛の価格優位性を担保するため本土より低い酒税を適用した。創設当初は5年間の時限措置だったが、以降も期限を迎えるたびに延長を繰り返してきた。

 軽減措置が切れると商品価格に転嫁されて県民の家計負担につながるという主張に加え、製造業の少ない沖縄で泡盛は離島の雇用を支える重要な地場産業であることなどを理由として、国も延長を認めてきた。

 一方で、沖縄の酒造業界に対する税制優遇の継続は、企業の経営革新や体質改善の動機付けを逸することになったという見方も強い。琉球大の獺口浩一教授は「(軽減措置が)長い間続いたことで、県外と同レベルの企業努力をする必要がなかった面がある。競争力がないから措置が必要なのではなく、措置が続いたことで競争力を付けられなかったのが実態だ」と指摘した。

 22年度の税制改正に向けた国の議論を前に、酒造業界は軽減措置の延長に理解を求める一方で、今回を「最後の延長」として退路を断つ姿勢を自ら示した。

 県酒造組合の佐久本学会長は「(廃止までの)10年の間にそれぞれの強みを生かせば単純な価格の過当競争にはならず、小規模な酒造所も希少性を武器にして生き残れる」と話し、琉球泡盛全体のブランド力を高めて県外、海外へ販路を拡大していく方針を示す。

 一方で、オリオンビールは取材に「現段階でコメントできない」としている。オリオン側は27年5月までの5年間は現行の20%の軽減率を維持することを求めていたが、大綱では26年9月末までの4年5カ月で、段階的に軽減率を縮小していく形となった。

 オリオン関係者は「沖縄は仕入れや物流のコストが大きい。(措置の廃止で)価格が上がってしまうのではないかと不安だ」と話した。
 (沖田有吾)