沖縄研究奨励賞に2氏 自然部門に小野氏、社会部門に萩原氏


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(左から)小野尋子氏、萩原真美氏

 沖縄協会(上原良幸代表理事)は10日、沖縄の地域振興や学術振興に貢献する人材の発掘と育成を目的にした沖縄研究奨励賞の第43回(2021年度)受賞者を発表した。自然科学部門に小野尋子琉球大工学部教授(49)、社会科学部門に萩原真美聖徳大大学院教職研究科准教授(47)の2個人が選ばれた。

 小野氏は「沖縄本島内駐留米軍基地跡地利用計画に関する一連の地域提案型研究」が評価された。基地跡地利用計画では、返還前に基地に立ち入って地下水位の計測ができないため、緑地の広さや地下水がどれだけ必要かなどが具体化しなかった。小野氏は、地域気象観測システム(アメダス)を利用し、雨の降り方で1日ごとの湧き水量の変化を予測できるシステムを構築。基地に入らなくても、大規模緑地の配置計画が策定できるようになった。このシステムを普天間飛行場の跡地利用計画にも活用する。

 萩原氏は「占領下沖縄の学校教育」で1945年~49年の沖縄の教育制度と社会科の成立過程を調べた。米軍政府の方針で、戦後初の教育制度は日本本土と異なり、初等学校8年、高等学校4年制。ガリ版刷りの教科書で沖縄を中心とした歴史を教えていた。

 しかし、米軍政府の援助予算の削減で日本から教科書を輸入することになり、そこに沖縄の歴史が全く記されていなかったことから、沖縄民政府が副読本を作成し、社会科の授業で沖縄の歴史を扱うことになった経過を明らかにした。沖縄の戦後教育史研究の前進につながる重要な研究と評価された。

 同賞は沖縄を対象に研究する50歳以下の新進研究者が対象で、全国10都府県から20件の推薦応募があった。人文科学部門は該当なしだった。

 贈呈式は来年1月19日、那覇市のパシフィックホテル沖縄で開かれる。
 (中村万里子)