素質はありながらも入学時は決して速かったわけではなかった。現在10人が5000メートル14分台で走るなど北山男子駅伝部が急成長を遂げた背景には、練習方法の改革と厚底シューズへの対応の二つがあった。
選手の能力の底上げを図るため、大城昭子監督はこれまで県外での合宿を強化してきた。しかしコロナ禍で県外遠征ができなくなった。練習内容を大きく見直し、新たに水泳をトレーニングに導入した。県内では暑さから「内臓疲労」を起こす可能性があるため、長時間の練習ができなかった。水中なら暑さを回避しながら有酸素トレーニングができ、体力の土台づくりに成功したという。
陸上部監督の助言も得ながら、スピードが楽に出せる動きや体づくりを目指す「北山式ドリル」を考案し、昨年から本格的に練習に組み込んだ。短い距離をウオーキングしながら、もも上げをしたり肩甲骨回りを動かしたりするなど、短距離走者に近いトレーニングを長い時間かけて取り組んだ。何度もトラックを往復することで自然とスタミナや筋力の強化、フォーム改善にもつながった。基礎力の向上を目指した動きは数十種と増え、今も改良が続く。
加えて取り組んだのが厚底シューズへの順応だ。けがへの怖さから導入をためらっていたが、全国の長距離界では厚底の利用が広がっていた。大胆な改革の必要性を感じ、かかとから着地させて駆ける走法から、つま先側の前足部で走る「フォアフット走法」を取り入れた。時間をかけて取り組んできた動きづくりで厚底に耐えられる筋力が付き、いい走り方で体へのダメージも軽減されるようになった。
動きづくりは5~6年前から模索してきた。大城監督が指導した選手で格別に才能を認める、石垣市出身の島袋太佑が在籍した頃だ。当時のメンバーも素質は十分だったが、全国は43位の記録だった。「当時も今のようなトレーニングができていたら」と悔しさを感じる。同時に、じっくりと育成期間を設けるなど練習法の改革に取り組んだことで、大きな飛躍につながったと確信する。
2017年の全国高校駅伝で1区を走り、30分42秒で区間23位だった島袋は「自分の在籍時から、いろんな練習を試した。自分たちが最初で、それが形となって成果が出たんだと思うとうれしい」と後輩たちの努力をたたえる。「都大路は去年からいいところに来て、今年は入賞できるレベルと思っている」と期待を込めてエールを送った。
(謝花史哲)