【識者談話】ヘイト規制条例案「姿勢は示せる、差別解消には不十分」安田浩一氏(ノンフィクションライター)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
安田 浩一さん

 ヘイトスピーチ(憎悪表現)や差別の問題を長年取材しているノンフィクションライターの安田浩一さんは、県条例制定を前に示された「構成案」について、「地域で差別を許さないという姿勢を示せる」と一定評価しつつ「解消に向けては不十分だと思う」と指摘した。今後、実効性のある条例制定に向けて議論の進展に期待した。

 安田さんは不十分だという理由について3点を挙げる。

 東村高江の米軍北部訓練場ヘリパッド建設工事で2016年10月、大阪府警から派遣された機動隊員が「土人」「シナ人」と差別的な言葉を発した事例を挙げ「沖縄差別、地域差別に基づく言動にも言及すべきだ」と指摘した。

 さらに、被害を受ける側の「本邦外出身者」の定義が「県内に適法に居住又は滞在するもの」に限定されていることについて、難民や何らかの理由で非正規に滞在する事例もあるとして「必要ない」とした。

 差別の抑制措置として挙げられている氏名の公表については「一定の抑止もあるが、名前を出して確信犯的にやっている人がほとんど。行政罰、刑事罰があってもいいと思う」と主張した。

 これらを踏まえた上で、条例制定に向けては表現の自由との兼ね合いに気をもんでいると推察し「ヘイトスピーチは単なる暴言ではない。差別される少数者に沈黙を強いている。表現の自由、言葉を奪われているのは少数者だ」と指摘した。 (仲村良太)