【深掘り】米軍、抜け穴だらけオミクロン対策 「厳格な制限」でも酒気帯び容疑


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 新型コロナウイルスの新たな変異株、オミクロン株の感染拡大に危機感が強まる中で、大規模な感染拡大が続く米軍キャンプ・ハンセン所属の米兵が、21日未明に酒気帯び運転容疑で逮捕された。米兵のモラルの低さとともに、米軍の基地内での行動規制や感染防止策の実効性に対する疑念が一層深まった。他国から、沖縄の基地に直接入る米兵への検疫体制に抜け穴は否めず、基地の中と外を自由に往来する米兵が、県民の「感染リスク」を高めている状況だ。

キャンプ・ハンセン内で大規模な感染拡大が続くことを受けて、小田原潔外務副大臣、在日米軍沖縄地域調整官のジェームス・ビアマン中将に電話で対策強化を求める玉城デニー知事=21日、県庁(県提供)

 玉城デニー知事は21日午前、小田原潔外務副大臣、在沖米軍トップの四軍調整官ジェームズ・ビアマン中将と相次いで電話会談した。

 玉城知事は(1)感染が収束するまでの間、米本国などから沖縄への軍人、軍属の異動停止(2)キャンプ・ハンセンに勤務する全ての軍人、軍属に対してPCR検査を実施(3)ハンセンに勤務する全ての軍人、軍属の基地外への外出禁止(4)基地外でのマスク着用を徹底するなど、行動指針を順守(5)基地内で変異株スクリーニングができる体制の早急な構築―を申し入れた。

 沖縄の米軍基地に他国から入った米兵は通常、10日間の行動制限措置がとられることになるが、日本政府が入域外国人に義務付けている「入国時PCR検査」など、感染を水際で防ぐ措置は義務付けられていない。

 外務省沖縄事務所によると、ハンセンの大規模なクラスター(感染者集団)は、行動制限が解除されるタイミングでPCR検査を実施し、感染が明らかとなった可能性があるという。ただ、海兵隊のウェブサイトによると、米軍は「行動制限」となった場合も、基地内を自由に行動できていたとみられており、一定の条件下ではマスクを外した行動も可能だった。

 米側は、クラスターが明らかとなった後、感染者をハンセンの中で「厳格な隔離措置」の下に置き、感染者と同じ部隊の隊員も「キャンプの中で厳格な行動制限をとっている」などと日本側に説明している。しかし、制限中だった隊員らも、基地内を自由に移動していたとみられ、基地内でのまん延につながっている可能性が否定できない。

 玉城知事と電話会談したビアマン調整官は「県民、われわれの部隊、家族も含めて、非常に脅威だ」と述べたという。

 だが、ハンセン所属の隊員が基地の外で酒気帯び運転で逮捕される事態などに、県関係者は「県民が大きな危機感を抱き、米軍への不信も高まっている。米軍側はしっかりと認識すべきではないか」と強調した。

 玉城知事は会見で「(行動制限に)甘んじることなく検査を行い、防疫体制がしっかりとれているか、公表を求めていく」など、米軍基地の防疫体制の強化を引き続き日米双方に求めていく考えを示した。
 (池田哲平まとめ)