「世界最悪」レベルのコロナ感染状況に…長引く緊急宣言に翻弄<沖縄この1年2021>


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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自治体や経済界、医療界などと緊急共同メッセージを発表する玉城デニー知事=8月1日、那覇市の県庁

 2021年、新型コロナウイルスの感染拡大は20年に続き一層深刻度を増した。3月以降はアルファ株が広がって「第4波」となり、7月以降はデルタ株に置き換わった「第5波」が相次いで沖縄を襲った。9月末まで約4カ月の緊急事態宣言期間を含め、10月末までのほとんどの期間で飲食店は時短営業の要請を受けた。県民は夜の外食を我慢せざるを得なかった。変異を重ねるウイルスに翻弄(ほんろう)された1年だった。

 昨年から始まった第3波は、年末年始の休みや成人の日の直後に感染が急増した。成人式後の飲み会で2件のクラスターが発生し、2次、3次感染へと広がった。県民の感染症対策に教訓を残した。今年も人の往来が活発になる年末を迎える中、注意が必要だ。

 第5波では感染力の強いデルタ株が広がった。感染者が急増し、8月25日には1日当たりで最大の809人を記録。県内の感染状況は「世界最悪」レベルとなった。

 うるま市の老年精神科病院.うるま記念病院では、国内最大級のクラスター(感染者集団)が発生し71人が亡くなった。医療機関でのクラスターが相次いだ。

 県と医療界、経済界、市町村代表は8月1日に2週間の外出自粛などを呼び掛ける緊急共同メッセージを発表した。

 一方、感染者千人当たりの死亡数は7.9人で、全国平均10.7人を下回った。沖縄の医療従事者の奮闘が際立った。

 コロナ対策の切り札とされたワクチン接種が3月5日、医療従事者を皮切りに順次実施された。12月22日現在の1回目接種率は69.0%。目標の7割に達していない。

 緊急事態宣言は9月末で解除された。飲食店への営業時短要請も10月末で終了した。商業施設や繁華街では人出が少しずつ増加し、人々のにぎわいが戻り始めた。

 長い自粛期間に耐えた県民がようやく日常を取り戻し始めた矢先の12月17日、県内で「オミクロン株」の発生が確認された。1人目は米軍キャンプ.ハンセンの基地従業員で、同基地関係者やその家族の感染確認が続いている。

 ハンセンでは22日までに米軍人ら223人が感染するクラスター(感染者集団)が発生。県は基地内でオミクロン株の感染が広がっている可能性が高いとみるが、米兵の感染実態は依然として明らかになっていない。

 コロナ禍が始まり間もなく2年。在日米軍が入国する際の「検疫の欠陥」は放置されたままだ。
 (知念征尚)

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 2021年も残りあとわずか。この1年の主なニュースを振り返る。